今年読んで面白かった小説 ベスト5 (上半期)
こんばんは。
おお、寒いっす。
今日食べた豚汁定食では、さすがにこの寒さはしのげませんでした。
やはり明日は、海鮮チゲを食べるべきか。
しかし、なんと言っても、寒さ防衛の最終兵器ですからね、チゲは。
ここで伝家の宝刀を抜いていいものなのかどうか悩む今日この頃です。
これからもっと寒くなりそうだし…。
マッチ売りの少女も、海鮮チゲ、そしてユニクロのエアテックコートがあれば、あんな悲劇が起こらなかったかもしれません。
それはともかく、今年の1~6月に読んだ本の中からベスト5を選ぶのでした。
この寒さのなか、選考は熾烈を極め、頭の中がショートしたみたいで火花が散っています。
メジャーな賞の受賞作だったり、ベストセラーだったり、いろんな書評を読んだりして選んだ作品ばかりなので、つまらない作品というのはあまりなかったです。
でも、たま~に、芥川賞受賞作や人気作家がやっつけ仕事で書いた作品の中に、なんじゃこりゃ~と思う作品が無きにしも非ず。
ほかには、時代のトレンドにもなっている作風について行けないオイラの感受性の鈍さとか。
たとえば、「○○入門」とか「○き○き大○き超○してる」。そして、若い人たちから絶賛されているらしい○坂○太郎も、なんかもよくわからない。
こういうタイプの本を絶賛して読んでいる若い人たちとの間に溝ができてしまったようで、一抹の寂しさを感じますな。
わからないけど、一応トライしてみようとする積極性は買って欲しいのですけどね~。
それはともかく、こんな私でも、これは面白いと思った作品がたくさんありました。
順位をつけようと思ったのですが、タイプが違うので順位がつけられません。
読んだ順に、ベスト5を選ぶと次のような感じでしょうか。
あくまで自分が読んで面白かったというだけの基準です。もちろん、たぶんに独断と偏見が入っていますので念のため。
● 世界の中心で、愛をさけぶ 片山 恭一
作者が同年代なので、むしろ古風な香りのする作品ですね。マンネリという批判もあるようですが、言葉の一つひとつが美しい。個人的には、村上春樹の「ノルウェイの森」をはじめて読んだときのことを思い出しました。病気の女の子と彼女に思いをはせる男の子というシチュエーションは同じですね。まさにメロドラマの定番。
● 歳月(上・下) 司馬遼太郎
明治の元勲、江藤新平を主人公にした司馬さんお得意の幕末英雄伝ですね。司馬作品にしてはあまり有名ではなかったので、ワンランク落ちるのかなと最初思いましたが、どうしてどうして。
有名な「花神」「世に棲む日日」「峠」に匹敵する傑作です。江藤新平の波乱万丈の生涯は、坂本竜馬や高杉晋作、西郷隆盛、大久保利通、大村益次郎の生涯にひけをとりません。清廉潔白な人柄が墓穴を掘るという人の世の皮肉さは、今も昔も関係ないのですね。
● 火天の城 山本兼一
一口で言うと、安土城の築城を請け負う大工の総棟梁が、さまざまな困難に直面しながら城を完成させるまでのストーリー。伏線として、父と子の葛藤や仲間同士の軋轢、仕事にかける職人の意地みたいなものが織り込んである。
興味深いのは、当時の築城の技術的な面が、職人の視点で細かく書かれていること。こういう切り口で書かれた、戦国の歴史小説は今まで読んだことがありません。書棚にある安土城の図面や航空写真と見比べながら、自分が安土城を作る職人の気分になって一気に読みましたね。
● ワイルド・ソウル 垣根 涼介
メジャーな賞を3つ取ったということで読んだ作品。長いです。ブラジル移民の苦労を書いた冒頭の部分は読み応えがあります。かなりリアリティがあると思ったら、作者は現地で数ヶ月に渡って取材したとか。やっぱり行かないとこの雰囲気は出せないのかも。
事件は日本を舞台にして起こるのですが、私がよく行く場所が出てくるので別な意味で楽しめました。作者も当然、下見に行ったのでしょうね。どっかですれ違っていたかもしれない。
● 邂逅の森 熊谷達也
これは言わずと知れた直木賞受賞作。なかなか一般人にとって、マタギの世界というのは実感として理解できない部分があるのですが、この作品を読むとバーチャルリアリティのごとく体験できるかも。
この作者も冬山をさんざん歩き、長期間マタギと寝起きを共にして、この作品を書いたとか。
人間の一生は限られたもの。とてもいろんな経験をしたくても限界がありますよね。本を読めば、いろんな人生、いろんな場面を体験できる。
やはり、いいですね~、本は。
横山秀夫の「臨場」「影踏み」は、ワイルド・ソウルとどちらを入れようかと争ったのですが、物語のスケールで後者に軍配があがりました。でも、総合力はもちろん横山秀夫のほうが上でしょう。
ちなみに、横山秀夫著「臨場」の書評は、以下のとおりです。
○横山秀夫著「臨場」
やっぱり、うまいな~。短編という限られたページ数で、きっちり起承転結をつけ、しかもホロリとさせる部分もある。無駄がないリアリティー。
カッチリし過ぎて、遊びがない部分が窮屈だという人もあるけれど、それもこの作家の大きな個性だと思う。遊びがない分、毎回、アイデア勝負となる。
そのアイデアが、それぞれ秀逸で、よく同じ人の頭からこんなにアイデアが出てくるなと感心しますよ。
村上春樹は大好きな作家の一人ですが、今回は他の作品に譲ったという形です。でも、今まで読んだ中でつまらなかった作品がひとつもないのはすごいですね。それほど多作というわけでもなく、厳選した作品を世に出しているということでしょうか。
それから、今あえて本格ミステリーで勝負しようとした、「硝子のハンマー」の貴志祐介も捨てがたい魅力はありました。
ちなみに、以前、「硝子のハンマー」について書評を書きましたね。
ついでと言ってはなんですが、もう一度載せさせていただきます。
○ 硝子のハンマー 貴志祐介
あの名作「黒い家」を書いた著者の本格ミステリー。
途中まで、すごく面白かった。やはりミステリーなので、あらすじを細かく書けないんだけど、企業のセキュリティーがすごく細かく書き込まれていてリアリティーがある。
本格モノって、トリックや謎に力を入れ、そこから物語を作っていくことが多いから、どうしても現実にはありえないようなシチュエーションになる場合が多い。まあ、それはそれでおとぎの世界の話として考え、素直に謎解きを考えられるから好きなんですが。
途中まで読んでいて、これはまぎれもなく★四つの評価だなと思った。ただ最後の種明かしのところでちょっと作者の辻褄あわせのような苦しさも感じられて、惜しい~と★半分のマイナスと自己チュー評価させていただきました。
でも、相当セキュリティーには細かく触れていて、その方面の知識を得られるだけでもこの本は「買い」ですな。
ちなみに作者の出世作、「黒い家」は厳しく評価しても、四つ★評価以上なのは間違いありません。
作品の作り方として、まず今まで考えられてこなかった密室殺人事件を作ろうとして、次にその方法論をいろいろ考え、それに対するシチュエーションや道具立てを組み込んで行ったのかもしれませんね。
しかし、ちょっと不自然な道具が中にあったと思う。それにこれだけの長編にしては、トリックがちょっと小粒で、謎もそれほど読者をひきつけるにしては弱かったのかもしれない。
もっとも短編のトリックで、ここまで面白く引っ張るんだから、作者の筆力はすごいと思えますね。
なんか、次点の作品の書評のほうが長くなっちゃいました。
平成17年下半期のベスト5は、年内に発表させていただきます。
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