脳卒中で倒れたときの応急処置2 医師と女子高生の会話から
こんにちは。
前回のブログで、私の友人の不慮の事故のことを取り上げました。
現在の彼の状況は、週二回、自宅からリハビリに通い、それ以外の時間は自宅で療養を続けているそうです。
独身なので、70歳過ぎのご両親がおもに彼の介護を行っていると聞きました。
言葉に障害が残っていて、コミュニケーションの手段は主に筆談。また右足に装身具をつけていて長く歩くのはつらいとのこと。
でも一番つらいのは、自分が思っていることが、言葉として発せられないことではないでしょうか。
一生懸命、伝えようとするのですが、わかってもらえず、頭をかきむしるような仕草をしていました。これは彼の立場になってみないとわからない苦しみかもしれません。
昔、彼が元気だったとき、友人たちと一緒にスキーへ行ったことがあるのですよ。
オイラにとって、生まれて初めてのスキー。
もう大変でした。エッジを利かせるという発想がまったくないのに、皆と一緒に上級者コースの山の頂上へ立ってしまったのです。
そこへ悪友の一人が背中をドンと突いたからたまらない。
急斜面を直滑降。
途中のこぶで数メートルも吹っ飛ばされ、頭から雪の山に突っ込みました。
上半身が雪に埋まり、スキー板がはずれ、逆立ちになった足が見事なV字型を描いていたそうです。
おお、「犬神家の一族じゃ~!!!」
友人の一人が、オイラを指差して叫びました。当時の映画の衝撃的なワンシーンとそっくりだったのですが、今や知らない人は多いでしょうね。
もーいや、こんなせーかつ!!(← マカロニほうれん荘のそうじ君バージョンでお願いします)
さすがにオイラはキレて、もう二度とお前らとはスキーへ行かないと、一人いじけて初心者コースですべっていました。
でも、基礎がわからないから全然上達しない。
そこへ助けの手を差し伸べてくれたのが、例の友人。
付きっ切りで、スキーの基礎を教えてくれたのです。
おかげで、2泊3日の最終日には、なんと上級者コースでも転ばずに下りてくることができるまで上達しました。
こちらも彼にいろいろ教えたこともありましたが、スキーに関してはホントに感謝しています。
そんな一番やさしい、友人思いの男がこんなひどいことになるなんて。
オイラの背中を後ろから押した男はその後出世したんですよ。
やはり、この世に神はいないのか。
いや、まだわからないですよね。
これだけひどいことがあったのだから、あとの半生はいいことばかりが彼に続いてほしいと願っています。
さて、前回は、「脳卒中で倒れたときの応急措置」の話題を取り上げました。
「脳の病気シリーズ」は、月一回のペースでお送りしています。脳卒中は一刻も早く専門病院へ、と書いておきながら、応急処置の話題を1ヵ月あとにするのは、いささかはばかられまする。
そこで今回はイレギュラーとなりますが、二回連続して「脳の病気シリーズ」をお送りいたします。
今日が始めての方、この記事に興味のある方は、先に前回の記事をお読みいただければ幸いです
登場人物は、脳外科のベテラン医師と現役女子高生のAYAちゃん(松戸あや)の二人。
AYAちゃんは、おじいさんが脳神経外科病院へ入院したことで、毎日お見舞いに通ってくる元気な女子高生。
将来、看護師になることを夢見て、おじいさんの担当医師から脳卒中のことを勉強しているという設定でしたね。
前回、「脳卒中で倒れたときの応急措置」について勉強したAYAちゃん。
今日もまた、突然、脳卒中で倒れる人がいたら、周りの人たちはどう対応すればいいかが話題になります。
それでは…。
< 脳卒中で倒れたときの応急処置 >
● AYAちゃん「ふーん。すると脳卒中で倒れた人を助けたいときは、まず息がちゃんとできているかどうかを見ることが大事なんですね」
食事中に倒れたときは食べ物がまだ口の中にあったり、脳卒中が原因で吐いたりしたときは、吐しゃ物がのどに詰まることがあるんだ。
薄れた意識では呼吸する力も弱まっているから窒息して死んでしまうこともある。また肺のほうへそれらが流れていって肺炎を起こすこともあるんだよ。
● AYAちゃん「そうならないためには、具体的にどうしたらいいんですか?」
その前にもう一度最初から、脳卒中の応急処置の仕方を整理してみようか。まず救急車を呼ぶこと。気持ちはあせっていると思うけど、119番の担当者から聞かれることを、落ち着いて、要領よく答えることが大切だよ。
● AYAちゃん「トイレや風呂場、道の真ん中などで倒れてしまったときはどうするんですか?」
とりあえず、安全で安静にできる場所へ運んだほうがいいね。ただ、ひとりで運ぼうとすると患者さんの体に負担がかかる。2~3人で体を水平にしたまま、静かにかかえて運ぶことが大切だよ。
注意しなければいけないのは、首を曲げたり、振ったりしないようにすることだ。それから本人が歩けると言っても、立ち上がられたり歩かせたりするのはやめたほうがいい。
● AYAちゃん「わかりました」
次に意識を失っているかどうか確認するんだ。意識を確認するには、名前を読んだり、体を少し強くつねってみたりした反応で大体わかる。
● AYAちゃん「もし意識がなかったら?」
ちゃんと呼吸しているか、心臓が動いているかを見る。さっきも言ったように、脳卒中になると意識障害が起きて、呼吸する力が不十分になることが多いんだ。意識がなかったり、朦朧としていたりするときは、呼吸しやすい体位にして救急車を待つことが大切だよ。
● AYAちゃん「それなら私にもできそう。いびきをかいている人には、肩の下に座布団なんかを入れると収まるっていいますね」
そうだね。頭を後ろにそらすと気道が確保されるからだよ。それと、意識障害を起こしているときは、肩ごと顔を真横にして少しあごを上げ、首が曲がらないように頭の下に枕やクッションを入れてあげると呼吸が楽にできる。
また、舌の付け根がのどの入り口をふさいだり、吐いたものがのどに詰まったりするのも防げる。ただ、顔だけ真横にすると首がねじれて、かえって気道が狭くなるから、肩と一緒に顔を真横にすることがポイントだよ。
● AYAちゃん「脳が死んだり、心臓が止まったりする前に窒息して死んでしまうのは嫌ですからね」
それから付け足すけど、口の中に異物があるとき、それをかき出そうとして指を噛まれることがあるんだ。そんなときは、薄い布で包んだ割りばしを上下の歯の間に入れておき、ガーゼやハンカチを巻いた指でかき出してあげるといいね。
● AYAちゃん「ちょっと抵抗あるけど、人ひとりの命がかかっているんですものね。頑張らなくっちゃ」
そこまではわかったかな。さて、呼吸をしていなくて、心臓も動いていないときはどうするか。
● AYAちゃん「死んじゃっているってことですか?」
とんでもない。たとえ呼吸が止まって心臓が動いていなくても、目の前で倒れたような場合だったら命が助かるケースが少なくないんだ。逆に呼吸が止まってから、オロオロして何もしないでいると、ほんの数分で手遅れになる。すぐ救命処置をすることが必要だよ。
● AYAちゃん「人工呼吸と心臓マッサージですね」
そう。ああびっくりした。知っているんじゃない。具体的なやり方は、あとで見てもらえばわかるけど、ためらわず勇気を出してやることが大切だよ。
救急車が来るまで、ほんの数分の実行で人一人の命が助けられることもある。いざというとき勇気を持ってできるように、日頃から勉強して知っておくといいね。命の恩人と一生感謝されることもあるのだから。
● AYAちゃん「私でも、人の命を助けられるかもしれないんだ。勉強しておきます」
おもに脳出血を例に話したんだけど、脳卒中の応急処置や治療が一刻を争うというのはわかったかな。脳こうそくでも同じことが言えるんだよ。
● AYAちゃん「脳こうそくは、脳の血管が詰まる病気だから、頭の骨の中が血でいっぱいになることはないんですよね」
脳卒中の治療のところで詳しく話すつもりだけど、脳の血管に詰まった血のかたまりを溶かす薬があるんだ。その薬を静脈に注射してやると、血のかたまりはバラバラになって先のほうへ流れていくから血流は回復する。
● AYAちゃん「わっ、いいですね、その薬」
でも、血の流れが途絶えてから時間がたち、脳の細胞が死んでしまったらいくら血のかたまりを溶かして血流を回復してもどうしようもないんだ。あとで説明するけど、逆に脳出血が起こって命が危険になることもあるんだよ。
● AYAちゃん「脳細胞は一度死んだら生き返らないんでしたよね。やはり早く救急車を呼んで、脳の専門医のいる病院で治療してもらうのが大切なんですね。ところでその薬って、倒れてからどれくらいの時間で使えば効果があるんですか?」
脳こうそくになってから3時間以内にこの薬を使えばとても効果があるんだ。脳の細胞は、完全に酸素や栄養が絶たれると3分ぐらいで死んでしまうんだったよね。だけど脳こうそくになっても早期なら、血流がほんの少しは保たれている。
脳細胞のすべてが死んでしまったわけではなく、生きている部分もかなりあるんだ。3時間以内なら、その生きている部分を救うことができるんだよ。
● AYAちゃん「そうか、脳の中でも救急車の到着を待っているんですね。でも3時間か。思ったより時間があるような気もしますけど…」
救急車ですぐ脳卒中の専門病院へ運ばれればセーフだけど、専門病院へ運ばれなければこの治療が受けられないんだ。別の病院へたらいまわしにされたり、素人判断で救急車を呼ぶのが遅れたりしたら、3時間なんてあっという間だよ。
それに専門病院へ運ばれてからも、いろいろ検査をしてから、この薬を使うかどうか、またどれくらいの量を使うか決めるわけ。だから3時間なんてあっという間にたってしまう。
● AYAちゃん「なるほど」
今では医療技術も格段に進歩しているから、早く治療を受けられれば、脳卒中で命をなくしたり、後遺症で苦しんだりすることを最小限にできるんだ。
● AYAちゃん「なるほど。じゃあ、先生の携帯電話の番号とメールアドレス、教えてもらえますか?」
ちょっとAYA君、何を考えてるの?
● AYAちゃん「脳卒中で倒れたら、いかに早く脳の専門医に来てもらうかが大切なんですよね。人工呼吸や心臓マッサージも、やっぱり本職の人にやってもらわなきゃ」
やっぱり、わかってない…。
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