自分が、去年読んで面白かった小説 グランプリ作品発表!
こんにちは。
今日は長くなりそうなので、前ふりなしで行きまっす。
さて、さんざん引っ張った読書ネタ。
とうとう今日、大賞を発表して決着がつきまする。
ところでおととしは、ベスト10だけ選んで、大賞受賞作は選べなかったんですよ。
昨日発表された直木賞みたいに、該当作なしというのではなく、どんぐりの背比べで選べなかったというか。
今年は、ベストワン作品を自分の頭の中の満場一致で決定することができました~♪
それは、最後に発表いたします。
その前に、前回書けなかったベスト5作品のブックレビューから。
● 終戦のローレライ 福井晴敏著
昨年ベスト10入りした「亡国のイージス」に続き、今年もベスト5入りです。長大な小説なのに、長さを感じない。
こちらのほうが好きだという人もまわりに多かったような気がします。
前作同様、次から次へとトラブルが発生し、それを一つひとつ乗り越えながら、若き主人公が成長してゆく過程がまた共感を呼ぶのかも。
時代はタイトル通り、第二次世界大戦の終結間際。ドイツの降伏後,秘密兵器ローレライを搭載して,潜水艦が日本まで回航されてくる。
その秘密兵器の「ローレライ」とは何なのか、が前半の大きな山場。突拍子もないものなのですが、その背景や経緯がしっかり書き込まれているので、リアル感が損なわれることはありませぬ。
ある雑誌で作者へのインタビューを見たのですが、最初から映画化を想定して書かれたものだとか。
テーマを潜水艦モノということで依頼したのは映画監督だそうですね~。
潜水艦なら、セットもそれほどお金がかからないですから。
そんなセコイ舞台裏があったとは思えないほど、この物語は雄大でプロットや伏線も複雑に富んでいて、ストーリテラーとしての作者の才能が感じられます。
それにしても、当時の潜水艦での生活は大変だったのでしょうね。狭いし、息苦しいし、臭いもきつそう。
読んでいて息苦しさを覚えてくるくらいだから、このリアル感は半端ではない。
誰でも、戦争末期の潜水艦での生活を経験できる。
本を読むだけで、普通ではとても味わえない経験ができるなんて、いゃ~読書ってホントにいいもんですね~。
● 四日間の奇蹟 浅倉卓弥著
この本を図書館で手に取ったとき、まったく期待していなかったんですよ。ほかに借りたい本が全部借りられていて、仕方なくこれを選んだのでした。
ところがどっこい、読み始めて数分で、あれれ、これは面白いじゃんと、オイラの借りたかった本を借りていった人に感謝したぐらい。
あらすじをそのまま引用すると、脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。
ちなみに、第1回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作だそうですね。
宣伝文には、審査員から「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化、とありました。
装飾された宣伝文には、一応興味を惹かれますが、それを真に受けて喜んで読むほど若くはない。
今まで何度も期待を裏切られた悲しい過去があるからです。
しかし、この作品に限っては、なるほど~確かにおっしゃる通りと納得できました。
最初の数ページを読んだだけで、この人、文章がうまいなとまず驚き。そして、出だしのインパクトと思わせぶりな伏線の張り方に次を読みたいという興味をそそられる。
新人というより、どこぞの文学賞の審査員の作家先生よりもうまいと思われる文章力。
ただ、ミステリーではないし、プロットも、実はどこかで読んだような印象をうける。
この作者のその後の作品の評価もあまり聞かないし…。
それでも、オイラはこの作品の中に他の作家の作品とは比べ物にならない魅力を発見しました。
それは、「 」の中。
登場人物の台詞回しのうまさですね~。
とくに、主人公の相手役?を演じる岩村真理子の台詞がとてつもなく長いんですよ。
もう、一人でしゃべりまくるというか。
それでも、この人物の魅力が伝わってくる。
読んでいて、となりでペラペラしゃべっているような臨場感を味わえます。
ファンタジーのシーンとかもあって、読後感は最高でした。
まだ読んでいない人は読んで損はないと思いますよ。
● 対岸の彼女 角田光代著
こちらの作品はブログでの中でも取り上げましたね。
オイラが気に入った箇所は、普通の文学的な部分ではなく、ビジネスの現場の臨場感でした。
とくに、女性社長の率いる旅行代理店が、新規事業としてハウスクリーニングを手がけるリアル感にはびっくりしたな~もう。
スモールビジネスの現場にいるオイラからしても、全然違和感がない。
ハウスクリーニングの研修風景、新規事業立ち上げの問題点、チラシのポスティングの反応率。
現実に、企業が経験のない分野で新規事業を立ち上げたら、こういうシュミレーションで事が進むだろうと思うのです。
たとえば最初は、知り合いが顧客になってくれるのだけれど、注文は3件でストップ。そこから、まったく仕事のない長~い空白期間。
チラシをポスティングしても、まったく効果なし。
それでもコツコツ宣伝していると、あきらめかけた頃に、電話で見積り依頼が入る。
しかし相見積りで、すぐには決まらない。
最初の仕事が決まったとき、感動して涙を流す主人公にジーンときました。
だけど、そのまま事業が軌道に乗るわけではなく、過酷な試練が待ち受けて…。
もちろん、作者が現場の人たちに密着して取材したからだと思いますが、作家自身にバックグラウンドがなければ、ここまでリアルに書けないかも。
その意味では突っ込みを入れられない作品でした。
世間的には、30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵という二人の主人公がビジネスの現場では社長と社員と立場は逆転する。
でも、屈託なく明るい葵社長の性格と生き方に共感できましたね。
● 深重の海 津本陽著
一転、こちらはこれぞ直木賞~という心にずんと響く極太の長編大作。
こちらも宣伝の文章を引用されていただくと…
明治11年12月24日夕刻、熊野灘の沖に現われた1頭の巨大な鯨に、300人もの男たちが銛を手に、小舟を操って立ち向かっていった。これが“背美流れ”と云われた大遭難の発端であり、慶長以来400年もつづいた古式捕鯨の組織“鯨方”壊滅の始まりでもあった。
文明開化という時代のさ中で滅びていった人びとの絶叫と、燦爛たる愛とをドラマチックに描いた感動の長編。
すごいっす。男の世界っす。
軽く生きている人たちを描いた小説の後に、命をかけて巨大な鯨に挑んでゆく男たちの姿を読むと、どちらが幸せなのだろうかと考えてしまいます。
いわゆる大きな目標に向かって、村の人たち全員が一丸となって助け合いながら生きているという感じ。
昭和の時代も、もう少し豊かになりたいというひとつの目標に向かって、多くの人たちは生き生きと生きていたような。
この本の中で、鯨を捕まえるのが多くの人たちの分業に支えられているということを知りました。
一頭捕まえるだけでひとつの村が潤うという男たちの使命感というか。
太く短い人生でも、目標が明確で迷いのない人生を送ることの素晴らしさを感じさせてくれる一冊でした。
● 鳥類学者のファンタジア 奥泉光著
いわゆるタイムトラベルものですが、同時に場所も移動してしまうという力技がすごい。
しかも、タイムトラベルを司っているのは猫ちゃんとは。
普通なら、荒唐無稽なストーリーになっているのでしょうが、この作品を魅力あるものにしているのは、主人公の三十路のジャズ・ピアニスト、フォギーこと池永希梨子の存在かも。
彼女は、国分寺のライブの夜に不思議な女性に遭遇する。幽霊のように思えた彼女は「ピュタゴラスの天体」「オルフェウスの音階」という謎の言葉を残して霧の中に姿を消す。
自分とよく似た容貌とピアノ弾きの手を持つその女性は大戦中にベルリンで亡くなったという祖母の曾根崎霧子ではないのか。
フォギーは後輩の佐和子と祖母のことを調べ出す。ベルリン留学中の霧子の周りにはナチスの影が差していた。父の三回忌で訪れた山形の実家の倉で祖母が父に贈ったオルゴールを発見したフォギーは時空を跳んで、戦時下のベルリンへ行く羽目になる。
ストーリーを追ってゆくと、フォギーの身にはとんでもないことが起こったことになりますよね。
同じタイムトラベルものの戦国自衛隊だったら、元の世界に戻ろうと焦燥し、絶望感すら漂っていました。
ところが彼女はあわてない。
いずれ戻れるだろうと、流れに身をゆだね、あまり深く考えずに新しい生活を送る。
本の中では、目が離れていていつもボーッとしている顔をした性格に描かれています。そこがまたほのぼのとしていてとてもいい。
なんとなく、平原綾香をイメージしてしまいました。
音楽家という共通点もありますし。
戦時下のドイツとタイムトラベルという設定なのに、この作品はゆったりゆっくりのんびりとストーリーが進む。
それでも飽きないのは、フォギーの自虐的で客観的な一人称の描き方かも。
作品全体を通じて、ジャズをはじめとする音楽の薀蓄で満たされているのも、センスのよさを感じさせます。
音楽のことがわからなくても、楽しめるところがまたいいですね。
お急がしの現代人にとって、何が起こっても、自分を客観的にほのぼのと眺められるフォギーの生き方は参考になると思いました。
また傍から見ても、魅力的ですよ。
…ということで、以上ベスト5のご紹介が終わりました。
この中から、グランプリの一冊を選ぶのですか。
そんなことして果たしていいのだろうかと思いつつ、どーせ素人だし、法律に違反するわけでもないから、いっちょやってやろうかなどと不遜な気持ちになる今日この頃。
それでは、清水の舞台から飛び降りる気持ちになって、ビジベンが選ぶ「私が今年読んで面白かった小説大賞2006」は…
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ… ( ← ドラムの音?)
浅倉卓弥さんの四日間の奇蹟に決定いたしました~♪
グランプリを取っても何も出ませんし、かえって評価が下がったどうしてくれると言われても責任を負いかねますので念のため。
理由ですか。
やっぱし、読む前と読んだあとのいい意味でのギャップが大きかったです、この作品は。
オイラ的には、医療に対するディティールがしっかり書き込まれていたのもポイントが高かったですね。
プロットやネタが、既存の有名作家の作品に似ているという批判も多々あるみたいですが、登場人物の台詞回しのうまさと魅力は、日本の作家の中でも最高水準だと思いました。
あとで聞いたら、執筆に一年以上を費やしたらしい。
実際の執筆の倍の時間を推敲作業に費やしたとか。
当時、素人だからできたのでしょうね。職業作家になると、ひとつの作品に7ヶ月間もかかりきりで推敲などできないでしょうから。
作家が骨身を削った完成度の高い作品を、ポップコーンをつまみながら寝転がって堪能できるのが読書のいいところ。
いや~、読書って、ホントに楽しいもんですね~。
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