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湘南・大磯 ウォーキングストーリー

 こんにちは。

 前回、サザンの故郷、湘南・茅ヶ崎を訪れたのですが、それから1ヵ月後、なんと茅ヶ崎のほうで仕事をすることになったのです。

 生まれて初めて訪れた茅ヶ崎を、再度訪れることになったのですね~♪。

 ブログやサザンとは関係ない仕事なのですが、こういうことは珍しい。

 …といっても、午前中だけで、午後はフリー。

 自営業の気安さもあって、せっかく湘南へ来たのだからとウォーキングをすることにしました。

 でも、茅ヶ崎は前回さんざん歩き尽くしたし、そのお隣の平塚も去年行ってしまいました。

 それなら、そのまたお隣、…ということで、大磯まで足を運ぶことにしたのです。

 大磯もまだ一度も訪れていないし…。

 茅ヶ崎のある大企業で、刺激的な体験をしたあと(書ければ面白いのですけど、守秘義務の誓約書に判を押してしまったので残念)、駅前のガストで豆腐ハンバーグを食べ、東海道線に乗り込みます。

 滑るように走る電車の中、子供の頃、東海道線の鈍行に揺られ、名古屋まで行ったことを思い出しました。

 よく覚えていないけど、8時間くらい電車に乗っていたような気が…。

 腰は痛くなるし、そのあと、「タッタッタ、ゴー タッタッタ、ゴー」という線路を走る音がずっと耳についたのを覚えています。

 今は快適。でも鈍行で走ると、駅ごとにその町で暮らす人たちの息遣いまで感じられるようで、楽しかったですね。

 そんなことを思いつつ、大磯駅に着きました。

 おお、古びた駅舎がまだ残っている。当時の郷愁がよみがえります。

 駅前のロータリーも昭和の面影。茅ヶ崎や平塚が都会化しているのに比べ、ものの10分で平成から昭和に戻ってしまったよう。

 それでいて、なんとなく上品なたたずまいは、明治中期から昭和初期にかけ、政財界人など要人の別荘地となっていたからでしょうか。

 たとえば、伊藤博文や吉田茂など大物政治家の別荘もあったとか。とくに吉田茂は、首相辞任後は大磯に居住していたこともあって、「大磯」は吉田の別称でもあったらしい。

 大磯駅を出て、線路沿いに西に向かいます。

 地図を見ながら、小高い丘をぐんぐん登ります。

 かなり急な坂。その曲がりくねった坂の両側にさすが大磯、というような豪邸が並んでいました。

 道は細いし、車の運転も大変でしょうね。店が一軒もないから、徒歩で買い物に行くとしたらかなりの急坂を上り下りしなきゃならない。

 どうしてこんな不便なところに、と思ったらその理由も納得できました。

 後ろを振り向くと、おお、相模湾の絶景が…。

相模湾を見下ろす絶景


 はるか水平線のかなたまで見渡せて、地球の丸さを実感できる。

 行ったことはないけれど、瀬戸内海を見渡せる尾道の風景はこんな感じでしょうか。

 この景色を毎日拝めるのなら、少々の不便は致し方ないかも。

 もっとも、お店の御用聞きがこのあたりを回っているのかもしれませんね。

 …と思うそばから、70歳くらいのおばあさんが買い物かごをぶら下げて急坂を登っていきました。

 丘の頂上にあるのが高田公園。

高田公園


 なんでも、高田保(1895~1952)の墓碑のある公園だとか。

 高田保という人を知らなかったのですが、随筆や小説、演劇などで文才を発揮して、晩年は大磯町の教育委員長を務めた人らしい。

 シンプルだけど特長的な墓碑が、相模湾を見下ろしている光景が印象的でした。

 坂を降りる途中では、大磯の街並みが相模湾をバックに広がっています。

大磯の街並み


 境内に多くの石造物が残る御嶽神社へお参りしたあと、東海道線の線路をわたり次の目的地へ。

 この一見何の変哲もない古い民家が、なんとあの文豪、島崎藤村が晩年を過ごした家っすか。

島崎藤村旧宅


 ここで余談ですが、オイラが子供時代、ある国語の試験を受けたとき、「破戒」や「千曲川のスケッチ」の作者は誰かという問題が出ました。

 すぐ頭に閃いたのが、「藤村」という文字。

 ところが、どうしても次の名前が出てこない。

 「藤村」は、苗字だと思ってしまったのですね。でも、何となく、下も「藤村」という言葉だったような。

 「なるほど、そうじゃ」と解答用紙に自信満々で、「藤村藤村(ふじむらとうそん)」と書いたのでした。

 あとで先生から、「藤村藤村」と書いた生徒が10人もいると聞かされ、オイラの創造力の欠如を思い知らされましたね。

 それはともかく、藤村は、昭和16年の1月に、休養のため湯河原を訪れる途中、知人とこの地を訪れたのだとか。

 そこで、「大磯は温暖の地にて、身を養うによし、時に仕事を携えて、かの海辺に赴くこととす、余にふさわしき閑居なり」ということで、大磯での生活が始まったらしい。

 最初は別荘みたいにして、東京と大磯を往復する生活が続いていたらしいですが、太平洋戦争がはじまるとこの地に住みながら執筆を行ったのですね。

 そして昭和18年8月に、大磯で死去。脳卒中だったそうですね。

 この家は、別荘として使用する目的で大正後期から昭和初期に建築されたそうな。

 だとすると、もう70年近くたっているのですが、とてもきれい。

旧宅室内


 不動産屋さんの賃貸物件として紹介されても、住んでみたくなるほどです。やっぱり古い日本家屋は落ち着いていて趣がありますな。

 藤村のゆかりの品があるともっとよかったのだけれど…。

 旧島崎藤村邸を出て、国道1号まで歩きます。

 横断歩道をわたるとき、湘南平がよく見えました。

湘南平


 湘南平は、平塚市南西部と大磯町北部にまたがる海抜181メートルの丘陵。あそこに登ればきっと絶景が見渡せるでしょうね。

 いつか行ってみようと思いつつ、旧東海道の国道1号を歩きました。

 大磯中学前から、中央分離帯と歩道部分にクロマツの大木が並んでいます。

旧東海道の松並木


 これが旧東海道の松並木。

 今から400年ほど前の江戸時代、東海道の改修の際に植えられたものだとか。

 当時の浮世絵にもこんな景色があったような。大名行列や当時の旅人たちの姿がイメージできました。

 そして、いよいよ湘南の海へ向かいます。

 この辺りの海岸を「こゆるぎの浜」と呼ぶのですか。

こゆるぎの浜


 「ゆるぎ」とは波の動揺のことで、古今和歌集にも詠まれたらしい。

 そう言われてみると、平安貴族が海岸に立って感傷にふけっている姿をこれまたイメージしてしまいます。

 浜を臨む海岸には、伊藤博文などそうそうたる名士たちの別荘が建ち並んでいたとか。

 司馬遼太郎ファンのオイラからしたら、若い頃の伊藤博文の行状を読んでいるから、それほどの感慨は感じませんが…。

 ふたたび東海道、いや国道1号に戻り、さっきとは反対方向へ歩きます。

 まもなく右手に、大磯町役場が見えてきました。

 そして次の目的地、鴫立庵はその隣にひっそりと、しかし別天地のような風格で存在していました。

鴫立庵


 あとでわかったのですが、鴫立庵は、しぎたつあんと読むらしい。

 役場の隣にありながら、入り口は深山幽谷の閑居といったたたずまい。

 いわゆる草庵なのですが、ここは日本三大俳諧道場のひとつだとか。あとは京都の落柿舎、滋賀の無名庵なのですか。

 なんとなく聞いたことがあるような。

 解説板には、鎌倉時代の有名な歌人・西行法師が、「心なき 身にもあわれは しられけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ」という和歌をこの地で詠んだとありました。

 そして、江戸時代初期に、小田原の崇雪という俳人が、西行を慕って大磯・鴫立沢のほとりに草庵を建て、その後これが鴫立庵と呼ばれたらしい。

日本三大俳諧道場


 その後、元禄時代に、俳人大淀三千風が庵を営み、ここを西行の鴫立沢とし、堂を造って西行の像を安置。また、ここに俳人や歌人を集め作品を制作させたので有名となり、東海道中の名所となったのですか。

 庭には、俳諧を刻んだ石碑が所狭しと置かれていました。

 その中に、「松本順」の墓碑を発見。

 松本順って、司馬遼太郎の「胡蝶の夢」に登場する幕府の奥医師だった松本良順ですよね。

 明治18年、初代軍医総監であった松本順の尽力によって開設されたのが大磯海水浴場なのだとか。

 そういえば、大磯駅前に「日本初の海水浴場」という看板があったような。

 いろんな場所を歩いていると、知識の断片がジグソーパズルみたいに埋まってゆく楽しみがありますね。

 それなら、と、もう一度日本最初の海水浴場へ行ってみることにしました。

 大磯港の隣がその場所らしい。

 岩場のあるこの場所でしょうか。

日本最初の海水浴場


 最初といっても、古さを感じさせるものはなく普通の海でしたが、なんとなく歴史を感じさせるイメージはありました。

 そして最後に向かったのが地福寺。

 島崎藤村とその奥さんのお墓がありました。

 こちらもシンプルだけど特徴的なデザインだと思ったら、最初に行った高田保の墓碑をデザインしたのと同じ人らしい。

 行った日は、梅が満開で得した気分になりましたね。

地福寺

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