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元銀行員が見た「半沢直樹」考 2 出向編

  こんにちは。

 ご無沙汰しております。

 社会現象まで起こしたドラマ、「半沢直樹」がついに終わりましたね。

 ドラマの影響を受けた現役の銀行員や会社員の悲喜劇がマスコミで取り上げられ、私もコメントを求められたりしました。

 その内容はこちら


 さて、宿敵の大和田常務に100倍返しを果たしたあと待っていたのが、半沢直樹の出向という衝撃のラスト。

 こんな終わり方、納得がいかないと憤慨した方も多いと思います。入り込んで見ていた私も、一瞬、額に青筋が立ちましたね。

 しかし、元銀行員の目から見たら、まさに銀行人事の真実を伝えるエンディングだと思いました。

 もし、半沢が昇進して大和田常務が懲戒免職になるハッピーエンドだったら、リアル感がなく冷めてしまったかも。

 半沢直樹は、元銀行員から見ても理想の銀行員。
 
 半沢直樹が取締役会で訴えた、「黒だと思っているものを白だと詭弁をならべている会議を変えるべきだ」というフレーズでは思わず、「その通り!」とつぶやいてしまいました。

 彼が権限を握って改革に取り組めば、銀行の持つ問題点はある程度解決できることは間違いない。

 しかし、半沢の最大の失敗は目立ってしまったこと。

 くだらないこと書くなよと言われそうですが、日本の銀行では突出して目立ってしまうとまず偉くなれない。

 仕事で失敗して目立つのはもちろんですが、面白いことに、成果を上げすぎて目立っても駄目なんですよ。

 もちろん、営業でトップの成績を上げたり、業務改革で収益を改善させたりすれば評価され、人より早く昇進することは可能です。しかし、それが嫉妬を買うような突出した成果だったら、必ず面白くないと感じる上司は出てきます。

 局地戦では勝利を収めても、長期的な大局として考えると負けてしまうのですね。

 銀行の取締役陣を眺めてみると、協調性のあり過ぎる人たちが並んでいると感じます。

 部下ではなく、上司に対する協調性と言いますか。

 私が仕えた支店長は、半沢が言う「黒だと思っているものを白だと詭弁をならべている会議を変えるべきだ」というタイプの上司でした。

 仕事に対しては厳しかったのですが、部下の一人ひとりに対する気遣いも欠かさない親分肌の人。

 役員になれる十分な実績を上げながら支店長止まりだったのは、上司に対する協調性が欠けていたからなのでしょう。

 半沢が取締役会で常務に土下座を求め、これ以上ないくらい目立ってしまった時点ですでに負けていたのかも。

 

 半沢が出向し、大和田が降格ながらも役員に留まることができたのは、対外的に一番目立ない選択肢を選んだからなのでしょう。 

 大和田が懲戒免職になったら、その理由をマスコミが知ろうとしますからね。 

 

 上に行く人は、自分を目立たせずに、有益な果実を手にする技術に長けています。

 自分は無関係を装いながら、うまく大和田常務を失脚させるような。

 もっとも、それではドラマとして視聴者の共感を得るのは難しいと思いますが…。



 ところで、リンク先の雑誌の記事でも紹介したように、ドラマでは「出向=地獄行き」みたいなニュアンスで使われています。

 雑誌の記事にあった現役銀行員のコメントを引用させていただきますと…

「そもそも大手の銀行であれば、役員になる一部の人間を除くほとんどの社員がいずれは出向する運命。特別なことではないのに、ドラマの中では“出向=地獄行き”のように描かれてしまっているのに腹が立つんです。
 出向が決まった上司に声をかける際の気まずさが飛躍的にアップしましたよ! とぼけたふりをして『ご栄転おめでとうございます』などと言う作戦ももう通用しませんから……本当に『半沢直樹』はよけいなことをしてくれたと若手社員たちは口をそろえています」


 確かに、リアルの銀行では、出向を、それほど重大なマイナス要因とは捉えていません。

 むしろ、働き盛りで出向する場合、「外に出せる銀行員」として一定の評価はされている人たちではないでしょうか。

 冷静に考えればわかるはずですが、出向先はどこも銀行の取引先。取引先の業績が落ち込めば、当然、融資している銀行のリスクが高まるわけで、戦力外の人物を取引先の枢要なポストには送り込めない。

 少なくとも一芸を持っていて、出向先の経営にプラスになるような人材でないといけないわけです。

 出向先で成果をあげて評価され、銀行の役員になった人もいます。銀行よりも出向先の職場の雰囲気がいいと自ら転籍してしまう行員もいるほどです。

 もちろん出向先の社長との人間関係に悩んでいる人もいますが、それは銀行にいた場合でも同じ悩みはあるはず。

 優良な取引先へ出向できた銀行員は、むしろ肯定的に受け取ってもいいのだと思います。


 銀行員が行きたくないところは、むしろ出向よりも内部にあるのですよ。

 私が銀行に勤めていた頃、仕事で失敗しそうになると、「ああ、これで、○○行きだな」などと同僚と話していた部署があります。

 それは本店にある、とあるセクション。

 具体的に書いてしまうと問題があるので伏せさせていただきますが、頭よりも体を使って仕事をする部署です。

 数年前、そこで働いている人たちと話をする機会がありました。

 そのとき、他のエリート部署で働いている人たちよりもよっぽど生き生きと仕事しているのがわかったのです。

 人間関係がすごくよく、仕事の内容はその日で終わり、ストレスを翌日に持ち越さない。

 給料だって他の部署と比べてそれほど差があるわけでもない。

 多少、これまで偏見があったのかと思いましたね。


 一度割り切ってしまえば、うらやましいほどの労働環境なのですが、外部から見ると「半沢直樹」で言うところの「出向」のイメージなのでしょう。

 相田みつをの名言に、『しあわせはいつもじぶんのこころがきめる』というのがありました。

 サラリーマンにとって、もっとも有意義な言葉かもしれません。

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