発表! 私が、去年読んで面白かった小説大賞 2007年上半期

 こんばんは。

 今日はいよいよ、「輝く!私が、去年読んで面白かった小説大賞」のネタです。

 去年も年初に同じネタをやったのですが、ずっと引っ張り続け、結局発表が一月の下旬にずれ込んでしまったのでした。

 発表したときは、今更、という空気が流れていたような気が…。

 今年は、そんな愚を犯してはなりませぬ。

 人は経験によって成長しないといけませんからね。

 …ということで、今日はベスト5から一気に大賞受賞作までの発表をいたしまする。

 ちなみにオイラが今年の上半期に読んだ候補作をもう一度あげますと、以下のとおりです。


1月

 学生街の殺人 東野圭吾
 司馬遼太郎が考えたこと 1 司馬遼太郎
 逃げ水 (上) 子母沢寛
 逃げ水 (下) 子母沢寛 
 城の作り方辞典 三浦正年

2月

 壁・旅芝居殺人事件 皆川博子
 司馬遼太郎が考えたこと 2 司馬遼太郎
 沈黙の教室 折原一

3月

 秘剣・雪割り 佐伯泰英
 ホック氏の異郷の冒険 加納一朗
 覇王の家 (上) 司馬遼太郎
 覇王の家 (下) 司馬遼太郎

4月

 陰魔羅鬼の瑕 (上) 京極夏彦
 陰魔羅鬼の瑕 (中) 京極夏彦
 陰魔羅鬼の瑕 (下) 京極夏彦
 花まんま 朱川湊人
 新史太閤記 (上) 司馬遼太郎

5月

 新史太閤記 (下) 司馬遼太郎
 灰色のピーターパン 石田衣良
 司馬遼太郎が考えたこと 3 司馬遼太郎
 顔 松本清張

6月

 電車男 中野独人
 県庁の星 桂望美
 新宿鮫 灰夜 大沢在昌
 TUGUMI 吉本ばなな
 今夜宇宙の片隅で 三谷幸喜
 司馬遼太郎が考えたこと 4 司馬遼太郎
 司馬遼太郎と城を歩く
 上高地の切り裂きジャック 島田荘司



 この中から、今年の上半期読んだ中で一番面白かった一冊を選ぶのですか。

 毎年思うのですが、それぞれ評判になった本ばかりですから難しいっす。

 しかし、清水の舞台から飛び降りる気持ちになって、ビジベンが完全自己チューで選ぶ「私が、去年読んで面白かった小説大賞2007 上半期」は以下のように決定しましたぁぁぁぁぁぁぁ~。

 毎年、ブックレビューを長々と書いているのですが、年間ベスト5もあるし、今回はさらっと書きたいと思います。


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ… ( ← ドラムの音?)

 
 ちなみに第五位は二作入りました。

第五位
 アキハバラ@DEEP 石田衣良


 石田衣良の作品は、池袋ウエストゲートパークシリーズを始めとして、読みやすくて好きなのですが、この作品も期待にたがわぬ面白さでした。ヲタクたちがオリジナル商品を開発してベンチャー企業を立ち上げ、それを乗っ取ろうとするどこかで見たような巨大企業の創業者とバトルを繰り広げるありがちなお話。

 でも、ヲタクの人物描写のディティールを見事に書き分ける筆力は相変わらず魅力がありますね。


 扉は閉ざされたまま 石持浅海

 「このミステリーがすごい」の2位に入ったということで読んだ作品。ランキングに注目していると、こんな興味深い作品と出会えるのですね。いわゆる「刑事コロンボ」みたいな犯人がわかっている倒叙推理小説。犯人が頭を絞って作り上げた完全犯罪を一見普通の若い女性が論理的に追い詰めてゆく頭脳戦が楽しめます。

 この本を契機に、この作者の作品を続けて2冊読みましたが、この作品が一番傑作みたい。


第四位

 上高地の切り裂きジャック 島田荘司


 島田荘司といえば、「占星術殺人事件」以来、独創的なトリックと奇想天外な場面設定で知られる本格推理作家ですね。ただ、あまりにそれらを追い続けるあまり、トリックがご都合主義的だなんて、批評家から言われたりする。でも、オイラはエンタテイメントとして、これほど面白い一応本格推理を書く作家は知りませぬ。よくこんな奇抜なトリックを思いつくなと、いつも思ってしまいます。

 この本は中篇集なので表題作のほか、中編2作があるのですが、とくに「山手の幽霊」はあまりにも奇抜なトリックとシチュエーションに驚きます。でもなぜか、納得させられてしまうところはさすが。


第三位

 花まんま 朱川湊人


 この本も、直木賞受賞作品ということで読んだ作品。短編集なのですが、昭和の時代の子供の目を通して、不思議な出来事が淡々と語られていくのはどの作品も共通していますね。高橋克彦や誰だか忘れましたが、子供時代の事件をノスタルジックに描写した直木賞受賞作がほかにもありましたね。

 ホラーをベースにした高橋克彦の作品のほうがインパクトはありましたが、やはり「昭和」「子供」「ノスタルジー」というアイテムは直木賞の選考委員には受けがいいのか、と…。
 でも、一作ならともかく、これだけレベルの高い作品を揃えられるのはかなりの技量だとお見受けしました。



第二位

 新史太閤記 司馬遼太郎


 司馬遼太郎のファンなのに、今までこんなメジャーな作品を読んでいなかったのは、今更「太閤記」なんて、と思っていたからかもしれませぬ。オイラが太閤記を最初に読んだのは、確か小学校4年生。柴田錬三郎が子供向きに書いた「豊臣秀吉」でした。これまで、どんだけ~豊臣秀吉について書かれた小説を読んだかわからないぐらい。

 でも、さすがは司馬遼太郎ですね。これだけアカデミックで論理的に秀吉をとらえた小説はありませぬ。
 まず尾張人と三河人の気質の違い。どうして尾張人が商人的な性格を持ちえたかという点をじっくりと説明してくれます。そこから秀吉は、いかに商人的な感覚で天下取りをして行ったかという過程が論理的に展開されるのですね。説得力あるし、なるへそ~と目からウロコをボトボト落としながら読みましたね。

 それに対して、三河人は極端な農民型の発想っすか。司馬遼太郎の秀吉ひいき、家康嫌いはよく知っているのですが、オイラのDNAはどっぷり三河人。
 ごもっとも、と言いつつも複雑な心境になる今日この頃でした。



 そして、並み居る強豪を抑えて、グランプリに輝いたのは…


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ… ( ← ドラムの音?)















 世界一やさしい脳卒中にならないための本 ビジベン

97847797008351

 あれっ? おかしいぞ。どっかで見たような画像がいきなり出てしまい…。

 パソコンが壊れたのかしらん。


 ずっこけて、パソコンの角に頭をぶつけた方もいらっしゃるかもしませんね。

 申し訳ございません。

 個人的な趣味で、一度やってみたかっただけです。

 新年早々、悪い冗談につきあわせてしまいました。

 それでは、今度こそ。

 一流作家の書いた有名な作品にオイラが優劣をつけるなんて、そんなことして果たしていいのだろうかと思いつつ、どーせオイラは素人だし、法律に違反するわけでもないから、そんなの関係ねぇ、そんなの関係ねぇ、はーい、おっぱっぴーという不遜な気持ちと清水の舞台から飛び降りた気分になって、ビジベンが選ぶ「私が、去年読んで面白かった小説大賞2007年 上半期」は…

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ… ( ← 再びドラムの音?)

「電車男」 中野独人さんに決定いたしましたぁぁぁぁぁぁぁぁ~


えええ~? 電車男が1位?

 また、大穴狙いっすか?と言われそう。

 確かに仰るとおりですが、でも個人的に去年の上半期に読んだ本の中では一番面白かったです。

 図書館でベストセラーになった本ということで、特別なコーナーができていたんですよ。一応、売れた本には目を通すことにしているので、多少抵抗はあったのですが借りて読んでみることにしました。

 そしたら読み始めて、5分ではまってしまいましたね。

 ご存知のように、2ちゃんねるの書き込みからの引用という形態。一般的に小説は作者の頭の中から生まれるフィクションの世界なのですが、どうしても作者の意図がところどころ垣間見えてしまう。

 もちろん編集の段階で手が入っているのでしょうけど、いろんな人が勝手に書き込んでいながら、見事にひとつのラブストーリーとなっているところに驚きました。

 しかも、実際の小説より臨場感たっぷり。作者の意図みたいな部分がないからでしょうか。

 キターとか、戦場の場面と勘違いしているような独特の書き込みも、新鮮で面白い。世の中、殺伐としているシーンが多いけれど、人の幸せを心の底から喜んで祝福できる人がこんなに多いのか、ということがわかっただけでもジーンときてしまいますた。

 「2ch文学の誕生」なんて誰か書いていたのを思い出しますが、まったく新しい表現形態が生まれたことが画期的なのかも。

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輝く!私が今年読んで面白かった小説大賞、ノミネート作品発表! 2007年上半期

 こんにちは。

 さて、気がついてみると、もう年末。

 今年もあとわずかですね。

 ぐるっとパスで、調子こいて秋から冬にかけ都内をぐるぐるまわっていたら、年末に仕事がたまってしまいました。

 昨日から、のども痛いし…。

 夏場、遊びほうけて冬になって青くなる、キリギリスの気持ちが実感できる今日この頃。

 今日から大晦日まで、お正月も若干仕事をしなければなりませぬ。

 もっとも以前、銀行に勤めていた頃は、初詣の人たちにまじって帰宅するなんてこともありましたから、あまり苦にはなりませんが…。


 それはともかく、最近、ホントに月日の経つのが早いと実感しています。

 つい最近まで、自分が若い若いと思っていたのですが、お馬鹿なことをしたら月に変わってお仕置きされる年代になってしまいました。

 外見の変化に精神年齢が追いつきませぬ。

 だらだら日を送っていて、気がついたら棺桶に片足を突っ込んでいた、では目も当てられませんからね。

 そこで、6年前から手帳にその日にあった出来事を簡単に書くことにしたのです。

 昨日より今日は成長していたい、と誰でも思うものですが、そうは問屋が卸しませぬ。

 だから、1年前よりは少なくとも、成長していたいものだ、と…。


 オイラの手帳利用法の唯一のオリジナルといえば、読書目録みたいなものを書いていることでしょうか。

 手帳に日記を書き始めたと同時に続けているのですが、これがなかなかいいです。

 子供の頃から本を読むのが好きだったので、生まれてからどれほど本を読んだかわからない。

 数年前、一度読んだ本を買ってしまったことがあって、これはいかんと本の名前を手帳に控えることにしたのですよ。

 せっかくだから、読んで面白かったかどうか、五つ星で評価することにしたんです。

 これも文学賞の選考委員になったような気分になって楽しめる。

 本は面白いんだけど、作家の性格が嫌いだから三ツ星だな、みたいな。


 …ということで、今日は、毎年恒例となりましたオイラが今年読んだ本の中で、面白いと思った小説ネタで行こうか、と…。


 題して、「私が面白かった小説大賞 2007」。


 小島よしおも流行語大賞を受賞しましたが、オイラはそんなの関係ねぇ~くて、単に個人的な趣味の面白かったかどうかだけで選んでいますので念のため。

 ちなみに去年のベスト5は以下の作品でした。


 ● 終戦のローレライ 福井晴敏

 ● 深重の海  津本陽

 ● 鳥類学者のファンタジア  奥泉光

 ● 四日間の奇蹟  浅倉卓弥

 ● 対岸の彼女  角田光代



 能書きはこのくらいにして、本日は「ビジベンは、こんな本を読んできた。2007年上半期 輝く私が読んで面白かった小説大賞 ノミネート作品発表」です。

 上半期があるなら、当然、下半期もあります。それはまた、いずれ。


 まずは、オイラが今年の1~6月までに読んだ本。

 読んだ小説は、以下のとおり、しめて29冊。

 ちなみに、去年は、22冊。おととしは34冊でした。

 去年よりは暇だったけれど、おととしよりは忙しかったのかな、といろいろ考えたのですが、その理由はわかりませぬ。

 もっとも、真田太平記や終戦のローレライのような文庫本のシリーズを読むと、どうしても多くなるのですが…。

 このほかにもビジネス書を結構読んでいるので、かなりの活字中毒かも。 

 まとまった時間がとれないので、電車や食事のときなど細切れの時間を利用して読むことが多いですね。

 それと、読みなれているからスピードも早いような気がします。

 図書館で借りた本がほとんどですが、なぜか日本人作家の本が多いのが特徴。

 前にも書いたことがありますが、最近、外人の登場人物の名前が覚えられなくて…。

 外人のプロレスラーの名前は、すぐ覚えられるのですが…。

 それはともかく、今年の上半期に読んだ本は以下のとおりです。発売された時期ではありませんので、念のため。


1月

 学生街の殺人 東野圭吾
 司馬遼太郎が考えたこと 1 司馬遼太郎
 逃げ水 (上) 子母沢寛
 逃げ水 (下) 子母沢寛 
 城の作り方辞典 三浦正年

2月

 壁・旅芝居殺人事件 皆川博子
 司馬遼太郎が考えたこと 2 司馬遼太郎
 沈黙の教室 折原一

3月

 秘剣・雪割り 佐伯泰英
 ホック氏の異郷の冒険 加納一朗
 覇王の家 (上) 司馬遼太郎
 覇王の家 (下) 司馬遼太郎

4月

 陰魔羅鬼の瑕 (上) 京極夏彦
 陰魔羅鬼の瑕 (中) 京極夏彦
 陰魔羅鬼の瑕 (下) 京極夏彦
 花まんま 朱川湊人
 新史太閤記 (上) 司馬遼太郎

5月

 新史太閤記 (下) 司馬遼太郎
 灰色のピーターパン 石田衣良
 司馬遼太郎が考えたこと 3 司馬遼太郎
 顔 松本清張

6月

 電車男 中野独人
 県庁の星 桂望美
 新宿鮫 灰夜 大沢在昌
 TUGUMI 吉本ばなな
 今夜宇宙の片隅で 三谷幸喜
 司馬遼太郎が考えたこと 4 司馬遼太郎
 司馬遼太郎と城を歩く
 上高地の切り裂きジャック 島田荘司



 こうしてあらためて見ると、相変わらず濫読かも。

 どちらかというと、歴史物とミステリーが好きなので、そのふたつのジャンルを中心に読み、箸休めとしてジャンルを問わずベストセラー作品を濫読する傾向にあるみたい。

 今年は、小説とは言えないと思いますが、城についての本も読めたのはなんだか得した気分ですね。


 それにしても、司馬遼太郎の本がやっぱし多い。

 小学生時代から毎年、必ず司馬遼太郎の本を読んでいるのに、まだ完読できないのですから、その著作量は膨大なのですね。

 以前にも書いたと思いますが、司馬史観という独特のアカデミックな内容はもちろん、オイラが惹かれるのはその文体。

 初期の頃は、他の多くの歴史小説のように読みづらい部分もあったのですが、脂が乗っている時期に書かれたものは、どれも記述が平易ですね。

 センテンスが短く、余計な文章の装飾がない。

 反面、司馬遼太郎の小説を読んでいると、関が原で大軍が戦塵をまじえる大迫力のシーンがリアルにイメージできる。

 行間で、ビジュアルを表現できる稀有な作家だと思いました。

 それから、「ここで余談だが…」という書き出しから始まるアカデミックな記述。

 オイラの知り合いの社長さんたちで司馬遼太郎のファンは多いのですが、中でも「余談」が面白いという意見をよく聞きます。

 むしろ、余談が面白いから読むという人もいました。小説というエンタテイメントの面白さとともに、余談でアカデミックな知識も仕入れることができる。

 一粒で二度おいしいのも、大きな魅力ですね。

 でも、最近は主だった作品は皆読んでしまったので、老後の楽しみが損なわれたのではないかと考える今日この頃です。


 その視点でいろいろな小説を読むと、現在のベストセラー作家の佐伯泰英の本はエンタテイメントの占める比率が高い。

 新聞や雑誌の書評を読むと、仕事に疲れたサラリーマンのおとうさんが、読書中は仕事を忘れられるという癒し効果を追い求めて買っているのだと書かれていました。

 確かに、オイラも銀行員時代、電車の中で頭をクールダウンしたいという意味で、内田康夫のミステリーをよく読みました。

 忙しくてなかなか遊びに行けないから、本の中で旅行ができて、なおかつミステリーの楽しさを味わえる、みたいな。

 これもまた、一粒で二度おいしい魅力でしょうか。 


 それはともかく、この中から、ベスト5を選ぶんすか。

 自分で言っておきながら、難しいっすよ。

 今日一晩、考えてみます。発表は次回。

 ところで皆さんは、どの小説を選びますか?


 最後になりましたが、今年はいろいろお世話になり、ありがとうございました。来年もまたよろしくお願い申し上げます。

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自分が、去年読んで面白かった小説 グランプリ作品発表!

  こんにちは。

 今日は長くなりそうなので、前ふりなしで行きまっす。

 さて、さんざん引っ張った読書ネタ。

 とうとう今日、大賞を発表して決着がつきまする。

 ところでおととしは、ベスト10だけ選んで、大賞受賞作は選べなかったんですよ。

 昨日発表された直木賞みたいに、該当作なしというのではなく、どんぐりの背比べで選べなかったというか。

 今年は、ベストワン作品を自分の頭の中の満場一致で決定することができました~♪

 それは、最後に発表いたします。

 その前に、前回書けなかったベスト5作品のブックレビューから。

● 終戦のローレライ  福井晴敏著

 昨年ベスト10入りした「亡国のイージス」に続き、今年もベスト5入りです。長大な小説なのに、長さを感じない。

 こちらのほうが好きだという人もまわりに多かったような気がします。

 前作同様、次から次へとトラブルが発生し、それを一つひとつ乗り越えながら、若き主人公が成長してゆく過程がまた共感を呼ぶのかも。

 時代はタイトル通り、第二次世界大戦の終結間際。ドイツの降伏後,秘密兵器ローレライを搭載して,潜水艦が日本まで回航されてくる。

 その秘密兵器の「ローレライ」とは何なのか、が前半の大きな山場。突拍子もないものなのですが、その背景や経緯がしっかり書き込まれているので、リアル感が損なわれることはありませぬ。
 
 ある雑誌で作者へのインタビューを見たのですが、最初から映画化を想定して書かれたものだとか。

 テーマを潜水艦モノということで依頼したのは映画監督だそうですね~。

 潜水艦なら、セットもそれほどお金がかからないですから。

 そんなセコイ舞台裏があったとは思えないほど、この物語は雄大でプロットや伏線も複雑に富んでいて、ストーリテラーとしての作者の才能が感じられます。

 それにしても、当時の潜水艦での生活は大変だったのでしょうね。狭いし、息苦しいし、臭いもきつそう。

 読んでいて息苦しさを覚えてくるくらいだから、このリアル感は半端ではない。

 誰でも、戦争末期の潜水艦での生活を経験できる。

 本を読むだけで、普通ではとても味わえない経験ができるなんて、いゃ~読書ってホントにいいもんですね~。


● 四日間の奇蹟  浅倉卓弥著

 この本を図書館で手に取ったとき、まったく期待していなかったんですよ。ほかに借りたい本が全部借りられていて、仕方なくこれを選んだのでした。

 ところがどっこい、読み始めて数分で、あれれ、これは面白いじゃんと、オイラの借りたかった本を借りていった人に感謝したぐらい。

 あらすじをそのまま引用すると、脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。

 ちなみに、第1回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作だそうですね。

 宣伝文には、審査員から「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化、とありました。

 装飾された宣伝文には、一応興味を惹かれますが、それを真に受けて喜んで読むほど若くはない。

 今まで何度も期待を裏切られた悲しい過去があるからです。

 しかし、この作品に限っては、なるほど~確かにおっしゃる通りと納得できました。

 最初の数ページを読んだだけで、この人、文章がうまいなとまず驚き。そして、出だしのインパクトと思わせぶりな伏線の張り方に次を読みたいという興味をそそられる。

 新人というより、どこぞの文学賞の審査員の作家先生よりもうまいと思われる文章力。

 ただ、ミステリーではないし、プロットも、実はどこかで読んだような印象をうける。

 この作者のその後の作品の評価もあまり聞かないし…。

 それでも、オイラはこの作品の中に他の作家の作品とは比べ物にならない魅力を発見しました。

 それは、「 」の中。

 登場人物の台詞回しのうまさですね~。

 とくに、主人公の相手役?を演じる岩村真理子の台詞がとてつもなく長いんですよ。

 もう、一人でしゃべりまくるというか。

 それでも、この人物の魅力が伝わってくる。

 読んでいて、となりでペラペラしゃべっているような臨場感を味わえます。

 ファンタジーのシーンとかもあって、読後感は最高でした。

 まだ読んでいない人は読んで損はないと思いますよ。


● 対岸の彼女  角田光代著
 
 こちらの作品はブログでの中でも取り上げましたね。
オイラが気に入った箇所は、普通の文学的な部分ではなく、ビジネスの現場の臨場感でした。
 
 とくに、女性社長の率いる旅行代理店が、新規事業としてハウスクリーニングを手がけるリアル感にはびっくりしたな~もう。

 スモールビジネスの現場にいるオイラからしても、全然違和感がない。

 ハウスクリーニングの研修風景、新規事業立ち上げの問題点、チラシのポスティングの反応率。

 現実に、企業が経験のない分野で新規事業を立ち上げたら、こういうシュミレーションで事が進むだろうと思うのです。

 たとえば最初は、知り合いが顧客になってくれるのだけれど、注文は3件でストップ。そこから、まったく仕事のない長~い空白期間。

 チラシをポスティングしても、まったく効果なし。

 それでもコツコツ宣伝していると、あきらめかけた頃に、電話で見積り依頼が入る。

 しかし相見積りで、すぐには決まらない。

 最初の仕事が決まったとき、感動して涙を流す主人公にジーンときました。

 だけど、そのまま事業が軌道に乗るわけではなく、過酷な試練が待ち受けて…。

 もちろん、作者が現場の人たちに密着して取材したからだと思いますが、作家自身にバックグラウンドがなければ、ここまでリアルに書けないかも。

 その意味では突っ込みを入れられない作品でした。

 世間的には、30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵という二人の主人公がビジネスの現場では社長と社員と立場は逆転する。

 でも、屈託なく明るい葵社長の性格と生き方に共感できましたね。
 

● 深重の海  津本陽著

 一転、こちらはこれぞ直木賞~という心にずんと響く極太の長編大作。

 こちらも宣伝の文章を引用されていただくと…

 明治11年12月24日夕刻、熊野灘の沖に現われた1頭の巨大な鯨に、300人もの男たちが銛を手に、小舟を操って立ち向かっていった。これが“背美流れ”と云われた大遭難の発端であり、慶長以来400年もつづいた古式捕鯨の組織“鯨方”壊滅の始まりでもあった。

 文明開化という時代のさ中で滅びていった人びとの絶叫と、燦爛たる愛とをドラマチックに描いた感動の長編。

 すごいっす。男の世界っす。

 軽く生きている人たちを描いた小説の後に、命をかけて巨大な鯨に挑んでゆく男たちの姿を読むと、どちらが幸せなのだろうかと考えてしまいます。

 いわゆる大きな目標に向かって、村の人たち全員が一丸となって助け合いながら生きているという感じ。

 昭和の時代も、もう少し豊かになりたいというひとつの目標に向かって、多くの人たちは生き生きと生きていたような。

 この本の中で、鯨を捕まえるのが多くの人たちの分業に支えられているということを知りました。

 一頭捕まえるだけでひとつの村が潤うという男たちの使命感というか。

 太く短い人生でも、目標が明確で迷いのない人生を送ることの素晴らしさを感じさせてくれる一冊でした。


● 鳥類学者のファンタジア  奥泉光著

 いわゆるタイムトラベルものですが、同時に場所も移動してしまうという力技がすごい。

 しかも、タイムトラベルを司っているのは猫ちゃんとは。

 普通なら、荒唐無稽なストーリーになっているのでしょうが、この作品を魅力あるものにしているのは、主人公の三十路のジャズ・ピアニスト、フォギーこと池永希梨子の存在かも。

 彼女は、国分寺のライブの夜に不思議な女性に遭遇する。幽霊のように思えた彼女は「ピュタゴラスの天体」「オルフェウスの音階」という謎の言葉を残して霧の中に姿を消す。

 自分とよく似た容貌とピアノ弾きの手を持つその女性は大戦中にベルリンで亡くなったという祖母の曾根崎霧子ではないのか。

 フォギーは後輩の佐和子と祖母のことを調べ出す。ベルリン留学中の霧子の周りにはナチスの影が差していた。父の三回忌で訪れた山形の実家の倉で祖母が父に贈ったオルゴールを発見したフォギーは時空を跳んで、戦時下のベルリンへ行く羽目になる。

 ストーリーを追ってゆくと、フォギーの身にはとんでもないことが起こったことになりますよね。

 同じタイムトラベルものの戦国自衛隊だったら、元の世界に戻ろうと焦燥し、絶望感すら漂っていました。

 ところが彼女はあわてない。

 いずれ戻れるだろうと、流れに身をゆだね、あまり深く考えずに新しい生活を送る。

 本の中では、目が離れていていつもボーッとしている顔をした性格に描かれています。そこがまたほのぼのとしていてとてもいい。

 なんとなく、平原綾香をイメージしてしまいました。

 音楽家という共通点もありますし。

 戦時下のドイツとタイムトラベルという設定なのに、この作品はゆったりゆっくりのんびりとストーリーが進む。

 それでも飽きないのは、フォギーの自虐的で客観的な一人称の描き方かも。

 作品全体を通じて、ジャズをはじめとする音楽の薀蓄で満たされているのも、センスのよさを感じさせます。

 音楽のことがわからなくても、楽しめるところがまたいいですね。

 お急がしの現代人にとって、何が起こっても、自分を客観的にほのぼのと眺められるフォギーの生き方は参考になると思いました。

 また傍から見ても、魅力的ですよ。


 …ということで、以上ベスト5のご紹介が終わりました。

 この中から、グランプリの一冊を選ぶのですか。

 そんなことして果たしていいのだろうかと思いつつ、どーせ素人だし、法律に違反するわけでもないから、いっちょやってやろうかなどと不遜な気持ちになる今日この頃。

 それでは、清水の舞台から飛び降りる気持ちになって、ビジベンが選ぶ「私が今年読んで面白かった小説大賞2006」は…

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ… ( ← ドラムの音?)

 
 浅倉卓弥さんの四日間の奇蹟に決定いたしました~♪

 グランプリを取っても何も出ませんし、かえって評価が下がったどうしてくれると言われても責任を負いかねますので念のため。

 理由ですか。

 やっぱし、読む前と読んだあとのいい意味でのギャップが大きかったです、この作品は。

 オイラ的には、医療に対するディティールがしっかり書き込まれていたのもポイントが高かったですね。

 プロットやネタが、既存の有名作家の作品に似ているという批判も多々あるみたいですが、登場人物の台詞回しのうまさと魅力は、日本の作家の中でも最高水準だと思いました。

 あとで聞いたら、執筆に一年以上を費やしたらしい。

 実際の執筆の倍の時間を推敲作業に費やしたとか。

 当時、素人だからできたのでしょうね。職業作家になると、ひとつの作品に7ヶ月間もかかりきりで推敲などできないでしょうから。

 作家が骨身を削った完成度の高い作品を、ポップコーンをつまみながら寝転がって堪能できるのが読書のいいところ。

 いや~、読書って、ホントに楽しいもんですね~。

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自分が、去年読んで面白かった小説ベスト5

 こんにちは。

 今年の冬はそれほど寒くないなと思ったら、ここに来て朝晩はグッと冷え込んできましたね。

 でも、子供の頃の記憶からすると、東京はもっと寒かったような。

 正月過ぎてから小学校に登校するとき、皆、吐く息が白くなっていたり、水溜りが凍っていたりして、よく転びました。

 去年の暮れから今年にかけて、氷はおろか、吐く息が白くなることもなかったです。

 ユニクロのエアテックコートだって、一度も着ていないのですよ。

 あれだけ苦労して覚えたヨン様巻きだって、もう忘れそうだし…。

 やはり、地球温暖化が確実に進んでいるのだと実感される今日この頃。

 おととしだったか、雪女の伝説は、東北の寒村ではなく、東京の青梅市が舞台だと聞いて驚いたのも、記憶に新しいところです。

 江戸時代は、青梅にも雪女が現れるくらい寒かったのですね。

 あと、何十年かしたら、冬に蚊取り線香やごきぶりホイホイのお世話にならなければいけないかも、と思ったのでした。


 さて、昨年、ノミネートまでしておきながら、発表がそのままになっていた「私が面白かった小説ベスト5 ( 2006年 )」。

 そろそろ書きませんと、読んだ本の中身を忘れてしまう。

 と言っても、ずいぶん前でしたから、何を読んだのかさえ忘れているのでした。

 ちなみにオイラが去年読んだ本をもう一度あげますと、以下のとおりです。


 1月
  龍臥亭事件(下)  島田荘司
  真田太平記 11  池波正太郎
  真田太平記 12  池波正太郎
  弥勒  篠田節子


 2月
  影武者徳川家康  隆慶一郎
  雨月荘事件  和久峻三
  エトロフ発緊急電  佐々木譲
  絆  小杉健治


 3月
  マレー鉄道の謎  有栖川有栖
  終戦のローレライ  福井晴敏


 4月
  生きる  乙川優三郎
  山妣  坂東真砂子


 5月
  石の中の蜘蛛  浅暮三文
  四日間の奇蹟  浅倉卓弥
  片想い  東野圭吾


 6月
  孤島パズル  有栖川有栖
  いま、会いにゆきます  市川拓司
  ネバーランド  恩田睦
  反自殺クラブ  石田衣良


 7月
  渇きの町  北方謙三
  背いて故郷  志水辰夫
  胡蝶の夢 (4)  司馬遼太郎


 8月
  大誘拐  天藤真
  天山を越えて  胡桃沢耕史
  対岸の彼女  角田光代


 9月
  深重の海  津本陽
  天使のナイフ  薬丸岳
  鳥類学者のファンタジア  奥泉光


 10月
  古代天皇の秘密  高木彬光
  暗黒館の殺人(上)  綾辻行人
  暗黒館の殺人(下)  綾辻行人


 11月
  自家製文章読本  井上ひさし
  真説宮本武蔵  司馬遼太郎
  千曲川のスケッチ  島崎藤村
  ダヴィンチ・コード(上)  ダン・ブラウン
  ダヴィンチ・コード(下)  ダン・ブラウン

 
 12月
  幕末  司馬遼太郎
  傷ついた野獣  伴野朗
  私家版日本語文法 井上ひさし



 うぬぬ、この中から5冊というのはホントに難しいっす。

 世界的ベストセラーをはじめ、巨匠や直木賞、推理作家協会賞受賞作が目白押しですからね。

 プロだったら、こんな神をも恐れぬ所業はできないかも。

 やはり素人はいいと思いました。
 
 それはともかく、上記の本の中から独断と偏見で、オイラが去年読んで面白かったベスト5を選ぶと次のようになります。

 ちなみに読んだ順番ですよ。


● 終戦のローレライ  福井晴敏

● 四日間の奇蹟  浅倉卓弥

● 対岸の彼女  角田光代

● 深重の海  津本陽

● 鳥類学者のファンタジア  奥泉光



 もちろん、去年ブログで取り上げたダヴィンチ・コードは期待にたがわぬ面白さだったのですが、それ以上に上記の5作品が面白かったというか、印象に残ったというか。

 ほかにも、去年読んだ中で、上記の作品に勝るとも劣らないくらい面白い作品はありました。

 たとえば、「雨月荘事件  和久峻三著」は、新しい試みのミステリー作品として素晴らしかったです。

 裁判記録ファイルそのものを、元裁判官が講師を務める「市民セミナー」の講義にそって読み進めるという魅力的な趣向。日本のミステリーでは例を見ない形式だそうな。

 読者は実際に裁判を傍聴し、参加しているような気分になる。

 もうすぐ陪審員制度がはじまるみたいだから、その前に全国民はこの本を必読のこと、なんて法律が改正されたりして。

 そのときの購入費は、もちろん公費でお願いしたいところですが…。

 実際の裁判と同じように、公判調書には起訴状、公判調書、証拠等関係カード、実況検分調書、証人尋問調書、逮捕状、弁解録取書、勾留状、供述調書、解剖結果報告書、鑑定書、被告人供述調書等、必要な書類がすべて収められ、しかも最後のどんでん返し部分は袋とじ。

 ちなみに、この本が日本推理作家協会賞受賞作なのは異論のないところです。

 リアルミステリーの好きな方は是非どうぞ。

 それから、「山妣  坂東真砂子著」も、一風変わった独自の世界を持っている小説でした。

 明治末期、東京からやって来た旅芸人が静かな越後の山村に嵐を巻き起こした。その男の肉体に隠された秘密、そして地主の若夫婦との間に芽生えた密やかな三角関係が、伝説の中から山妣の姿を浮かび上がらせる。明らかになっていく山妣の凄絶な過去。そして熊狩りの日、山神の叫ぶ声が響き、白雪を朱に染める惨劇の幕が開いた―。

 …と紹介文にある。

 書評を読むと、ホラー・伝奇小説の枠を破ったとあるけれど、確かにそのジャンルには収まらない。

 それほど怖くはないし、伝奇というほど古めかしくはない。生きるということの悲しさみたいなものを痛切に感じさせてくれる小説と感じましたね。

 正直言うと、この小説のテーマがよくわからないのですよ。

 ひと言でいうと、心の奥の部分に溜まるものがあって、それがなかなか取れなくて妙にセンチメンタルな気分になる。

 ただ悪い気分ではありませんので、念のため。

 ちなみに直木賞受賞作なのでした。

 それからもう一冊。

 「天山を越えて   胡桃沢 耕史著」

 こちらも推理作家協会賞受賞作だけあって、ミステリーの枠組みを備えています。

 最後でそれがわかるのですが、それを書くとネタばれになるのでこの辺で。

 でもこの作品は、ミステリーというより冒険ものですね。

 特に旧満州からモンゴルや旧ソビエトと接する中国奥地までらくだに乗って延々と苦しい旅をするシーンのリアル感はなかなかです。

 著者自身も、戦争中は中国で苦しい思いをしたようなので、その小さなエピソード一つひとつに惹きつけられました。

 「アラビアのロレンス」の映画の砂漠のシーンだけ忘れられないように、天山の砂漠のシーンはきっとこれからも頭に残りそうです。

 …と言いながら、ベスト5以外の作品に触れていたら、長くなりすぎてしまいました。

 これからベスト5の感想と、この中から、「私が、今年読んで面白かった小説大賞2006」を発表していたら、とんでもなく長くなりそう。

 なので、去年の総決算は、また次回に発表いたします。

 さて、皆さんだったら、どの作品を大賞に選びますか?

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私が、去年読んで面白かった小説大賞ノミネート作品発表!

 あけましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願いいたします。

 さて、今年最初のブログですが、去年の今頃の時期は、「私が、今年読んで面白かった小説ベスト10」のネタを書いたのでした。


 ちなみに去年のベスト10は

 ● この国のかたち 司馬遼太郎著

 ● 空中ブランコ 奥田英朗著

 ● クライマーズハイ 横山秀夫著

 ● 亡国のイージス 福井晴敏著

 ● 真田太平記 池波正太郎著

 ● 世界の中心で、愛をさけぶ 片山 恭一

 ● 歳月(上・下) 司馬遼太郎

 ● 火天の城 山本兼一

 ● ワイルド・ソウル 垣根 涼介

 ● 邂逅の森 熊谷達也

         (順不同)

 …でした。

 ランキングをつけようと思ったのですが、ジャンルが違うし、エンタテイメントか学術的興味か、など視点の置き方によってなかなか順位がつけられない。そこで、アトランダムに10作品を選ばせていただきました~。
  

 ちなみに、おととし読んだ本を調べてみると、全部で62冊。

 去年は、39冊しか読んでおりませぬ。

 もっともおととしは、真田太平記全12巻とこの国のかたち全6巻で荒稼ぎした感はあります。

 本を読む時間が少なくなっているのは、仕事が忙しかったからなのですが、本大好き人間としては素直には喜べない部分もあります。
 
 さて、去年読んだ小説は、以下のとおりです。発売された時期ではありませんので、念のため。


1月
  龍臥亭事件(下)  島田荘司
  真田太平記 11  池波正太郎
  真田太平記 12  池波正太郎
  弥勒  篠田節子


2月
  影武者徳川家康  隆慶一郎
  雨月荘事件  和久峻三
  エトロフ発緊急電  佐々木譲
  絆  小杉健治


3月
  マレー鉄道の謎  有栖川有栖
  終戦のローレライ  福井晴敏


4月
  生きる  乙川優三郎
  山妣  坂東真砂子


5月
  石の中の蜘蛛  浅暮三文
  四日間の奇蹟  浅倉卓弥
  片想い  東野圭吾


6月
  孤島パズル  有栖川有栖
  いま、会いにゆきます  市川拓司
  ネバーランド  恩田睦
  反自殺クラブ  石田衣良


7月
  渇きの町  北方謙三
  背いて故郷  志水辰夫
  胡蝶の夢 (4)  司馬遼太郎


8月
  大誘拐  天藤真
  天山を越えて  胡桃沢耕史
  対岸の彼女  角田光代


9月
  深重の海  津本陽
  天使のナイフ  薬丸岳
  鳥類学者のファンタジア  奥泉光


10月
  古代天皇の秘密  高木彬光
  暗黒館の殺人(上)  綾辻行人
  暗黒館の殺人(下)  綾辻行人


11月
  自家製文章読本  井上ひさし
  真説宮本武蔵  司馬遼太郎
  千曲川のスケッチ  島崎藤村
  ダヴィンチ・コード(上)  ダン・ブラウン
  ダヴィンチ・コード(下)  ダン・ブラウン

12月
  幕末  司馬遼太郎
  傷ついた野獣  伴野朗
  私家版日本語文法 井上ひさし


 
 こうしてあらためて見ると、去年もやはり濫読ですね。

 図書館に推理作家協会賞受賞作の全集が入ったので、それを中心に借りていた時期がありました。

 それから、直木賞や乱歩賞の受賞作も多い。

 ダヴィンチ・コードは、借りられるまで1年も待ったので、完全に旬を過ぎてしまった感も無きにしも非ず。

 ベストセラーになる本の共通点は読みやすいことでしょうか。横文字の登場人物だと、名前がみんな一緒に見えてこんがらがるという宿命の弱点を背負ったオイラでも、すらすら読むことができました。

 それにしても暗号物って、ツボに入ると面白い。暗号が解読されるまで、興味深く読み進めることができますからね。

 これがダヴィンチという世界的にメジャーな人物にまつわる話だというのもベストセラーの大きな要因だと、どこぞの新聞に書いてありました。確かに仰るとおり。

 ビジベン・コードだったら、発売する前から返本、裁断を余儀なくされていたことでしょう。

 キリスト教に基づく歴史的な変遷はとても興味深かったです。世界史は、高校時代の世界史の先生がひどかったので嫌いになってしまったのですが、世界的なミステリーを楽しく読むためにも、しっかり勉強しておいたほうがいいかも。

 ミステリー面での構成は、一応水準に達していると思いました。でも、ここまで大ヒットするような意外な展開があったかどうかと思うのですが…。

 やはり大ヒットの要因は、ダヴィンチ様とキリスト様のおかげかもしれませんね。それに暗号ミステリーをからめた着想の良さに尽きるような気がします。

 ところで日本にも、これと同じくらい面白い暗号ミステリーの傑作はありますよ。

 以前、ブログのネタにしたこともある「猿丸幻視行」。

 日本史の好きなオイラとしては、これ以上面白い暗号ミステリーの傑作にはまだ出会っておりませぬ。

 これはミステリーと呼べるのかどうかわかりませんけど、もう少しアカデミックな形で暗号解読の面白さを味わうなら、「人麻呂の暗号」なぞいかがでしょう。

 こちらは、構成の仕方が秀逸。

 それはともかく、今年も「私が、去年読んで面白かった小説ベスト10」を神をも恐れず書いてみたいと思います。

 去年は読んだ本が少なかったから、ベスト5ですね。

 …と思って、読んだ本のリストを眺めていて、ダントツの1位に輝いた作品があるのでした。

「私が、去年読んで面白かった小説大賞」とも言える作品。

 ちなみに、「ダヴィンチ・コード」ではございませぬ。最初から面白いだろうと思って読んだので、意外性という面で損した側面もありますが。

 この作品は、読む前は全然期待していなかったのです。

 借りるものがなくて仕方なく借りたというか。

 それが完全自己チューランキングトップ1に輝くのだから、児玉清さんもびっくり!

 さて、それはどの作品か。発表はまた次回。

 ところで皆さんは、どの小説を選びますか?

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今年読んで面白かった小説ベスト5( 平成17年下半期 )

 こんにちは。

 今年も残すところ、あと数時間となってしまいました。 

 さて、先日、ノミネートまでお送りして発表がそのままになっていた「私が面白かった小説ベスト5 ( 2005年下半期 )」。

 そろそろ書きませんと、年が変わってしまいそう。

 と言っても、ずいぶん前でしたから本人も何を読んだのか忘れてしまいました。

 ちなみに私が今年の下半期に読んだ本を、もう一度あげますと以下のとおりです。

 
7月

 この国のかたち 1 司馬遼太郎
 この国のかたち 2 司馬遼太郎
 空中ブランコ 奥田英朗
 この国のかたち 3 司馬遼太郎
 この国のかたち 4 司馬遼太郎

8月

 真田太平記 1 池波正太郎
 真田太平記 2 池波正太郎
 真田太平記 3 池波正太郎
 真田太平記 4 池波正太郎
 真田太平記 5 池波正太郎
 真田太平記 6 池波正太郎

9月

 この国のかたち 5 司馬遼太郎
 この国のかたち 6 司馬遼太郎
 クライマーズ・ハイ 横山秀夫
 即身仏の殺人 高橋克彦
 ななつのこ 加納朋子

10月

 オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎
 Pの密室 島田荘司
 暗殺の年輪 藤沢周平
 博士が愛した数式 小川洋子
 胡蝶の夢 (1) 司馬遼太郎

11月

 胡蝶の夢 (2) 司馬遼太郎
 胡蝶の夢 (3) 司馬遼太郎
 亡国のイージス 福井晴敏
 なんとなくクリスタル 田中康夫
 100億稼ぐ仕事術 堀江貴文

12月

 顔 (FACE) 横山秀夫
 真田太平記 7 池波正太郎
 真田太平記 8 池波正太郎
 真田太平記 9 池波正太郎
 真田太平記10 池波正太郎

 ちなみに今読んでいるのは、島田荘司の「龍臥亭事件」。

 いくら歴史小説が好きだといっても、さすがに真田太平記4レンチャンでは少しきついので、肩の凝らないミステリーをコーヒーブレイクに読んでいます。

 まだ読み始めたばかりですが、期待にたがわぬ面白さですよ。

 それはともかく、上記の本の中から独断と偏見でベスト5を選ぶと次のようになりました。

 ちなみに読んだ順番です。

● この国のかたち 司馬遼太郎著

 この本は、夏頃に日記のネタで大変お世話になりました。司馬遼太郎は、小説はもちろん面白いのですが、司馬氏独特の「余談」部分を切り取っても、それ以上に面白い。

 この本は、その余談部分を独立させた本と言ったらいいでしょうか。

 太平洋戦争や吉田松陰の教育論など、多くの方たちからコメントをいただきました。

 司馬氏の歴史の見方、考え方は、いつまでも古くならない。逆に今の時代に生きている私たちが、昔の人たちに教えられる部分がこれほど多いのかということに驚かされます。

 我々は、自分たちが思っているよりメンタルな面で進歩していないのではないかと考えさせられましたね~。

● 空中ブランコ 奥田英朗著

 この作品は、「邂逅の森」の熊谷達也と直木賞を同時受賞した作品ですね。テレビドラマにもなった作品。ぶっとび精神科医とぶっとび看護師の取り合わせに驚かされ、素直に面白かったです。

 彼らのもとを、ストレスに悩むさまざまな患者が訪れて診察を受けるのですが、診察の模様がありえね~。

 逆に主人公の医師と看護師のほうが診察をうけたほうがいいくらい。でも意外と違和感なく受け入れられたのは、精神科に対するこちらの知識が浅いからでしょうか。

 本気で治療していると思えないのに、結果オーライで治療してしまっているのは皮肉な話ですね。

 でも、こういう作品を直木賞にするということ自体、変わっている。面白いからいいですけど。

● クライマーズハイ 横山秀夫著

 この作品は、横山秀夫の代表作ではないと思いますが、どうしても横山秀夫を入れたかったです。

 それにしても、すごいペースで本を出している作家ですが、どれを読んでも手抜きがない。

 まさに職人としてのこだわりが感じられますね。

 12月に読んだ顔 (FACE)は、それほどではないだろうと思って読んだのですが、これも面白い。さすがです。

「クライマーズハイ」は、最近、テレビドラマでもやっていましたが、新聞社の紙面づくりにかけるプロ意識とノウハウがわかって勉強にもなりました。

 それにしてもプロットの作り方のうまさがこの作品には顕著に現れていますね。

● 亡国のイージス 福井晴敏著

 この作品も、「ワイルド・ソウル」同様、メジャーなエンタテイメント部門の賞を3つも取った作品。映画化もされ(ちなみに映画はまだ見ていませんが)、小説の評判も上々なのはわかっていましたが、期待以上に面白かったです。

 とくに中盤のどんでん返し。さすが乱歩賞出身ですね。中盤まではミステリー的な要素もあるのですが、そのあとは海洋冒険小説一直線。

 さまざまなトラブルが次々に起き、絶対的に不利な立場の主人公が困難を一つひとつ乗り越えて形勢を逆転して行くあたり、映画の「ダイハード」や真保裕一の傑作「ホワイトアウト」を髣髴とさせる面白さ。

 少し違和感があったのはラストですかね。少し説明しすぎのような。ちょっとありえないシチュエーションもあったし。それを割り引いても、傑作なのは間違いありませんが…。

● 真田太平記 池波正太郎著

 司馬遼太郎の「胡蝶の夢」とどちらにしようか迷ったのですが、すでに「この国のかたち」をあげていますので。

 何といっても全12巻。まだ10巻しか読んでいませんが、量はもちろん質もいいです。

 ただどちらかというと、以前、NHKのドラマで見た「真田太平記」のほうが面白かったかも。

 オイラの場合、大抵、テレビや映画より本で読んだ方が面白いんですけどね。たとえば、横溝正史などのミステリーは、絶対本のほうが面白い。

 丹波哲郎の真田昌幸や渡瀬恒彦の真田信之、徳川秀忠役の中村梅雀は適役でしたね。

 でも絵になりやすい真田幸村ではなく、己の意思を消し、家を守ることに専念したどちらかと言うと絵になりにくい兄の真田信之を主人公に据えた点は斬新だと思いました。

 時代の波に乗って大きく発展したものの、経営戦略に失敗して華々しく散るベンチャー企業より、大企業の狭間にあって、目立たないけれど、地道に長く存続してゆく中小企業のほうが実際、大変なのではないかということを連想しました。

 今年はいろいろお世話になりました。

 来年も細々と続けて行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは皆様、よいお年を。

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今年読んで面白かった小説 ベスト5 (下半期)

こんにちは。

 今日は、先日お送りした「私が面白かった小説」の下半期ベスト5をお送りしたいと思います。

 と言っても、まだ今年は終わっていないのですよね。

 大晦日のレコード大賞の発表にこの企画をぶつけようかと思いましたが、それほどのものでもありませんし…。

 それにしてもレコード大賞はどうなっちゃうんでしょうね。

 学生時代は、だれがレコード大賞をとるか、だれが新人賞をとるかで賭けをしました。

 …とはいっても、掃除当番を代わってあげるとか、持っている本やレコードをあげるとかいった可愛いレベルでしたけど。

 オイラは、ホント、見事に当たらなかったですね~。

 五木ひろしや森進一、布施明などその年に活躍して前評判の高かった歌手が大抵受賞するのですが、いつも穴馬ばかりを狙うから。

 ただ本人は穴馬を狙っている気はさらさらなくて、本当に一番だと思っているから始末が悪い。

 冷静に考えてみれば、大抵わかるんですけどね。

 今考えてみても、自分のアホさ加減に腹が立ちます。

 でも、最優秀歌唱賞は予想するのが難しいんですよ。

 和田アキ子がもらったとき、なぜだ~と絶句したのを覚えています。

 テレビを見ていたら、会場にいた人たちも、ええ~?と驚いたのがわかりました。  

 ただ、当時受賞したほとんどの歌手が第一線から離れてしまった現在、和田アキ子を選んだ審査員の先見性には敬意を表しますが…。

 中学、高校で自分は賭け事に向いていないとあきらめたのか、その後、一度も競馬や競輪をやったことがありません。

 それがよかったのか悪かったのか、どうなんでしょうね。

 それはともかく、本の話。

 私が2005年の6~12月に読んだ本は以下のとおりです。

 司馬遼太郎や池波正太郎のシリーズものを読んでいますので、冊数は多いですが、種類はさほどではないのかも。


7月

 この国のかたち 1 司馬遼太郎
 この国のかたち 2 司馬遼太郎
 空中ブランコ 奥田英朗
 この国のかたち 3 司馬遼太郎
 この国のかたち 4 司馬遼太郎

8月

 真田太平記 1 池波正太郎
 真田太平記 2 池波正太郎
 真田太平記 3 池波正太郎
 真田太平記 4 池波正太郎
 真田太平記 5 池波正太郎
 真田太平記 6 池波正太郎

9月

 この国のかたち 5 司馬遼太郎
 この国のかたち 6 司馬遼太郎
 クライマーズ・ハイ 横山秀夫
 即身仏の殺人 高橋克彦
 ななつのこ 加納朋子

10月

 オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎
 Pの密室 島田荘司
 暗殺の年輪 藤沢周平
 博士が愛した数式 小川洋子
 胡蝶の夢 (1) 司馬遼太郎

11月

 胡蝶の夢 (2) 司馬遼太郎
 胡蝶の夢 (3) 司馬遼太郎
 亡国のイージス 福井晴敏
 なんとなくクリスタル 田中康夫
 100億稼ぐ仕事術 堀江貴文

12月

 顔 (FACE) 横山秀夫
 真田太平記 7 池波正太郎
 真田太平記 8 池波正太郎
 真田太平記 9 池波正太郎
 真田太平記10 池波正太郎

 この中から、ベスト5ですか?

 シリーズで読んでいる作品は有利ですよね。「真田太平記」の文庫本は全12巻ですが、そのうちの10冊も読んでいる。

 司馬遼太郎の「この国のかたち」は6冊も。

 これはちょっと1冊の本とは比べられませんよね~。

 それに、「なんとなくクリスタル」を今頃読んでいるオヤジは珍しいかも。

 ところで、ホリエモンの本って、小説?

 自分の読書傾向に自ら突っ込みを入れていても仕方がない。

 また独断と偏見で、無理に選ぶと次の5冊でいかがでしょうか。

 …と思いましたが、長くなりましたので、それは次回。

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今年読んで面白かった小説 ベスト5 (上半期)

 こんばんは。

 おお、寒いっす。

 今日食べた豚汁定食では、さすがにこの寒さはしのげませんでした。

 やはり明日は、海鮮チゲを食べるべきか。

 しかし、なんと言っても、寒さ防衛の最終兵器ですからね、チゲは。

 ここで伝家の宝刀を抜いていいものなのかどうか悩む今日この頃です。

 これからもっと寒くなりそうだし…。

 マッチ売りの少女も、海鮮チゲ、そしてユニクロのエアテックコートがあれば、あんな悲劇が起こらなかったかもしれません。

 それはともかく、今年の1~6月に読んだ本の中からベスト5を選ぶのでした。

 この寒さのなか、選考は熾烈を極め、頭の中がショートしたみたいで火花が散っています。

 メジャーな賞の受賞作だったり、ベストセラーだったり、いろんな書評を読んだりして選んだ作品ばかりなので、つまらない作品というのはあまりなかったです。

 でも、たま~に、芥川賞受賞作や人気作家がやっつけ仕事で書いた作品の中に、なんじゃこりゃ~と思う作品が無きにしも非ず。

 ほかには、時代のトレンドにもなっている作風について行けないオイラの感受性の鈍さとか。

 たとえば、「○○入門」とか「○き○き大○き超○してる」。そして、若い人たちから絶賛されているらしい○坂○太郎も、なんかもよくわからない。

 こういうタイプの本を絶賛して読んでいる若い人たちとの間に溝ができてしまったようで、一抹の寂しさを感じますな。

 わからないけど、一応トライしてみようとする積極性は買って欲しいのですけどね~。

 それはともかく、こんな私でも、これは面白いと思った作品がたくさんありました。

 順位をつけようと思ったのですが、タイプが違うので順位がつけられません。

 読んだ順に、ベスト5を選ぶと次のような感じでしょうか。

 あくまで自分が読んで面白かったというだけの基準です。もちろん、たぶんに独断と偏見が入っていますので念のため。

● 世界の中心で、愛をさけぶ 片山 恭一

 作者が同年代なので、むしろ古風な香りのする作品ですね。マンネリという批判もあるようですが、言葉の一つひとつが美しい。個人的には、村上春樹の「ノルウェイの森」をはじめて読んだときのことを思い出しました。病気の女の子と彼女に思いをはせる男の子というシチュエーションは同じですね。まさにメロドラマの定番。

 
● 歳月(上・下) 司馬遼太郎

 明治の元勲、江藤新平を主人公にした司馬さんお得意の幕末英雄伝ですね。司馬作品にしてはあまり有名ではなかったので、ワンランク落ちるのかなと最初思いましたが、どうしてどうして。
 有名な「花神」「世に棲む日日」「峠」に匹敵する傑作です。江藤新平の波乱万丈の生涯は、坂本竜馬や高杉晋作、西郷隆盛、大久保利通、大村益次郎の生涯にひけをとりません。清廉潔白な人柄が墓穴を掘るという人の世の皮肉さは、今も昔も関係ないのですね。

● 火天の城 山本兼一

一口で言うと、安土城の築城を請け負う大工の総棟梁が、さまざまな困難に直面しながら城を完成させるまでのストーリー。伏線として、父と子の葛藤や仲間同士の軋轢、仕事にかける職人の意地みたいなものが織り込んである。
 興味深いのは、当時の築城の技術的な面が、職人の視点で細かく書かれていること。こういう切り口で書かれた、戦国の歴史小説は今まで読んだことがありません。書棚にある安土城の図面や航空写真と見比べながら、自分が安土城を作る職人の気分になって一気に読みましたね。
 

● ワイルド・ソウル 垣根 涼介

 メジャーな賞を3つ取ったということで読んだ作品。長いです。ブラジル移民の苦労を書いた冒頭の部分は読み応えがあります。かなりリアリティがあると思ったら、作者は現地で数ヶ月に渡って取材したとか。やっぱり行かないとこの雰囲気は出せないのかも。
 事件は日本を舞台にして起こるのですが、私がよく行く場所が出てくるので別な意味で楽しめました。作者も当然、下見に行ったのでしょうね。どっかですれ違っていたかもしれない。

● 邂逅の森 熊谷達也

 これは言わずと知れた直木賞受賞作。なかなか一般人にとって、マタギの世界というのは実感として理解できない部分があるのですが、この作品を読むとバーチャルリアリティのごとく体験できるかも。
 この作者も冬山をさんざん歩き、長期間マタギと寝起きを共にして、この作品を書いたとか。

 人間の一生は限られたもの。とてもいろんな経験をしたくても限界がありますよね。本を読めば、いろんな人生、いろんな場面を体験できる。

 やはり、いいですね~、本は。

 

 横山秀夫の「臨場」「影踏み」は、ワイルド・ソウルとどちらを入れようかと争ったのですが、物語のスケールで後者に軍配があがりました。でも、総合力はもちろん横山秀夫のほうが上でしょう。

 ちなみに、横山秀夫著「臨場」の書評は、以下のとおりです。

○横山秀夫著「臨場」

 やっぱり、うまいな~。短編という限られたページ数で、きっちり起承転結をつけ、しかもホロリとさせる部分もある。無駄がないリアリティー。
 カッチリし過ぎて、遊びがない部分が窮屈だという人もあるけれど、それもこの作家の大きな個性だと思う。遊びがない分、毎回、アイデア勝負となる。

 そのアイデアが、それぞれ秀逸で、よく同じ人の頭からこんなにアイデアが出てくるなと感心しますよ。

 村上春樹は大好きな作家の一人ですが、今回は他の作品に譲ったという形です。でも、今まで読んだ中でつまらなかった作品がひとつもないのはすごいですね。それほど多作というわけでもなく、厳選した作品を世に出しているということでしょうか。

 それから、今あえて本格ミステリーで勝負しようとした、「硝子のハンマー」の貴志祐介も捨てがたい魅力はありました。

 ちなみに、以前、「硝子のハンマー」について書評を書きましたね。

 ついでと言ってはなんですが、もう一度載せさせていただきます。

○ 硝子のハンマー 貴志祐介

 あの名作「黒い家」を書いた著者の本格ミステリー。

 途中まで、すごく面白かった。やはりミステリーなので、あらすじを細かく書けないんだけど、企業のセキュリティーがすごく細かく書き込まれていてリアリティーがある。

 本格モノって、トリックや謎に力を入れ、そこから物語を作っていくことが多いから、どうしても現実にはありえないようなシチュエーションになる場合が多い。まあ、それはそれでおとぎの世界の話として考え、素直に謎解きを考えられるから好きなんですが。

 途中まで読んでいて、これはまぎれもなく★四つの評価だなと思った。ただ最後の種明かしのところでちょっと作者の辻褄あわせのような苦しさも感じられて、惜しい~と★半分のマイナスと自己チュー評価させていただきました。

 でも、相当セキュリティーには細かく触れていて、その方面の知識を得られるだけでもこの本は「買い」ですな。

 ちなみに作者の出世作、「黒い家」は厳しく評価しても、四つ★評価以上なのは間違いありません。

 作品の作り方として、まず今まで考えられてこなかった密室殺人事件を作ろうとして、次にその方法論をいろいろ考え、それに対するシチュエーションや道具立てを組み込んで行ったのかもしれませんね。

 しかし、ちょっと不自然な道具が中にあったと思う。それにこれだけの長編にしては、トリックがちょっと小粒で、謎もそれほど読者をひきつけるにしては弱かったのかもしれない。

 もっとも短編のトリックで、ここまで面白く引っ張るんだから、作者の筆力はすごいと思えますね。

 
 なんか、次点の作品の書評のほうが長くなっちゃいました。

 平成17年下半期のベスト5は、年内に発表させていただきます。

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面白かった小説 ベスト5 平成17年上半期

こんにちは。

 いよいよ平成17年も残り2週間を切りましたね~。

 昨日は、パソコンで年賀状を作っていました。

 今はパソコンがあるから年賀状作りが簡単。

 昔は、年賀状を作るのも大変でした。

 わりと凝るたちなので、学生時代は一枚一枚手書きのイラストを書いていたのですよ。

 今より出す量は少なかったのですが、それでも書き終えるのに一週間近くかかったのを覚えています。

 中には、相手の同級生をからかった4コマ漫画もあったりして。

 正月開けに学校へ行ってから、正月早々やめてくれよ、と言われました。

 何でも、家族全員から、その年賀状をネタにして笑われたとか。

 何を書いたのか、あまり覚えていないのですが…。

 それはともかく、年が変わると手帳も新しいのに変えなければいけない。

 さっそく、来年用の新しい手帳を買ってきました~♪。

 オイラがここ数年使っているのは、能率手帳のウィック7。

 普通の手帳ですし、使い方も、ごくオーソドックスです。

 手帳っていうのは、使っているときはもちろんですが、年が終わってからもあとで読み返すと面白いですね。

 5年分の手帳を用意して、過去の同じ日に何をしていたかを比べてみると、新たな発見があったりする。

 数年前の自分と今の自分を比べてみて、成長しているか、はたまた後退しているか、わかります。

 また、あのときは大変だったけど、今思い返してみたら、大した悩みでもなかったじゃん、みたいなこともわかる。

 自分を客観視する上においても、手帳は有効利用できるのでは。

 さて、オイラの手帳利用法の唯一のオリジナルといえば、読書目録みたいなものを書いていることですかね。

 4年前からはじめたのですが、これがなかなかいいです。

 子供の頃から本を読むのが好きだったので、生まれてからどれほど本を読んだかわかりません。

 数年前、一度読んだ本を買ってしまったことがあって、これはいかんと本の名前を手帳に控えることにしました。

 せっかくだから、読んで面白かったかどうか、五つ星で評価することにしたんですよ。

 これも文学賞の選考委員になったような気分になって楽しめる。

 本は面白いんだけど、作家の性格が嫌いだから三ツ星だな、みたいな。

 …ということで、今日は、オイラが今年読んだ本の中で、面白いと思った小説ネタで行こうと思います。

 題して、「ビジベンは、こんな本を読んできた。2005年上半期」。

 上半期があるなら、当然、下半期もあります。それはまた、いずれ。

 今日は、私が今年の1~6月までに読んだ本ですね。

 読んだ小説は、以下のとおり、しめて34冊。

 このほかにもビジネス書を結構読んでいるので、かなりの活字中毒かも。

 まとまった時間がとれないので、電車や食事のときなど細切れの時間を利用して読むことが多いですね。

 それと、読みなれているからスピードも早いような気がします。

 図書館で借りた本がほとんどですが、なぜか日本人作家の本が多いのが特徴ですかね。

 最近、外人の登場人物の名前が覚えられなくて…。

 以下の本の中で、唯一最後まで読めなかったのが、「刑事の誇り」。

 ミステリーとしての評価の高い本ですが、なぜか横文字の登場人物の名前が全部同じに見える。

 あの名作、「薔薇の名前」を最後まで読めなかったミステリーファンは、もしかしてオイラだけなのでは。

 外人のプロレスラーの名前は、すぐ覚えられるのですが…。

 それはともかく、今年の上半期に読んだ本は以下のとおりです。発売された時期ではありませんので、念のため。

1月

 GOTH 乙一
 推理短編六佳撰 北村 薫/ 宮部 みゆき/選
 重力ピエロ 伊坂 幸太郎
 刑事の誇り マイクル・Z・リューイン
 死の壁 養老 孟司
 バカの壁 養老 孟司
 池袋ウエストゲートパーク 電子の星 石田 衣良

2月

 好き好き大好き超愛してる 舞城 王太郎
 小説 蒲生氏郷 童門 冬二
 世界の中心で、愛をさけぶ 片山 恭一
 ハリガネムシ 吉村 万壱
 鬼平と出世 山本 博文

3月

 鬼平犯科帳 池波 正太郎
 ワイルド・ソウル 垣根 涼介
 文鳥・夢十夜 夏目漱石
 天と地と (上、中、下) 観音寺潮五郎

4月

 神の子供たちはみな踊る 村上春樹
 斜め屋敷の犯罪 島田荘司
 東京湾景 吉田修一
 火天の城 山本兼一
 臨場 横山秀夫

5月

 介護入門 モブノリオ
 硝子のハンマー 貴志祐介
 歳月(上・下) 司馬遼太郎
 7月24日通り 吉田修一
 脳ドックは安全か 山口研一郎

6月

 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎
 アフターダーク 村上春樹
 長崎乱楽坂 吉田修一
 影踏み 横山秀夫
 邂逅の森 熊谷達也

 こうしてあらためて見ると、結構濫読ですね。

 夏目漱石や司馬遼太郎、観音寺潮五郎があるかと思えば、若手ミステリー作家の乙一や伊坂幸太郎、舞城王太郎もあったりする。

 また女性ファンの多い、村上春樹や片山恭一、吉田修一もありで…。

 大きく分けると、歴史もの、ミステリー、直木賞受賞作やベストセラーなど時代のトレンドを代表する作品に読書傾向が偏っているみたい。

 この中から、ベスト5を選ぶんすか。

 自分で言っておきながら、難しいっすよ。

 今日一晩、考えてみます。発表は次回。

 ところで皆さんは、どの小説を選びますか?

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私が面白かった乱歩賞受賞作ベスト3

 こんにちは。  

 昨日、調子に乗って長く書きすぎたために、発表できなかった「私が面白かった直木賞受賞作ベスト3」。  

 本の書評を思いつくまま、内容のないまま、だらだら書くのは大好きなので、注意しなければ。  

 では、早速行きますよ。

● 第三位 『13階段』 高野和明著  

…この作品は、平成13年度の受賞作品ですか。へぇ~、年まで13という数字なのですね。  

 それはともかく、この作品はよく出来ていると感じました。本格ミステリーって、どうしても途中だれる傾向があるのですよ。  

 人物紹介とか、容疑者への警察や探偵の尋問とか。  

 しかしこの作品は、ノンストップ。 ジェットコースターに乗っているみたい。

 次から次へと事件が立て続けに起こってあきさせないですね。

 それに何といっても、死刑執行の期日が迫っているという緊迫感が全編にみなぎっています。  

 どんでん返しもあり、読み終わったときは、おぉ、近代まれに見る傑作じゃと思いました。

 著者は、映画の作り方をアメリカで専門に勉強したらしいですね。

 描写法とか、息もつかせぬ展開とか、地下室のメロディや太陽がいっぱいのような良質のミステリーアクション映画といった感じでした。  

 でもねぇ。これだけの作品が処女作ではちょっと気の毒な気もする。

 このレベルの作品は、作家が生涯に1つや2つ書ければいいほうでしょう。あとが大変だと思いますよ、この著者は。  

 頑張ってくださいね。期待しています。

● 第二位 『写楽殺人事件』  高橋克彦著  

…この作品は、確か、幻の絵師・東洲斎写楽の新説としても注目されたのではなかったのでしたっけ。浮世絵の薀蓄がまた興味深くて、歴史の謎解きと現代の殺人事件が味わえる趣向ですな。  

 著者は、浮世絵の研究者としても知られる人らしいですから、それもうなずけます。これはちゃんと自分で研究していなければ書けない内容でしょうから。  

 この作品は、一言でいってゴージャス。200年の歳月の壁を越えておこる二つの謎、そして二重三重の殺人。

 一粒で二度おいしい乱歩賞作品と言っていいでしょうね。

 もっとも歴史ミステリーが好きだというビジベンの自己チュー評価もあるんだけど、それを割り引いても、よくできている。

 あとで知ったのですが、この作品。

 本当はもっと長いミステリーだったのだそうな。それを乱歩賞の応募規定にあわせて縮小したのだとか。

 そう言われてみると、ちょっと筋立てがバタバタする感じがなきにしもあらず。  

 著者の高橋克彦さんは、先日の私のブログの記事、「私が面白かった直木賞受賞作」で、第5位に入りましたよね。直木賞と乱歩賞を違う作品でベスト5入りしたのですから、その力量のほどがわかります。  

 そのあとの「北斎殺人事件」でも推理小説協会賞。これまた面白かった作品ですね。  

 ほめてばっかりですが、先日読んだ、「即身仏の殺人」はつまんなかったな~。

 これだけすごい作家も、こういうつまんない作品を書くこともあるんだということがわかって、少し溜飲が下がりましたけど…。  

● 第一位 『猿丸幻視行』  井沢元彦著  

 おそらく、この著者のこの作品が第一位になるなんて、意外に思った方も大勢いらっしゃるんじゃないでしょうか。  

 最近はどうだかわかりませんが、ひと頃、著者はよく、テレビの歴史番組に出ていましたね。歴史の新説、独自の解釈を発表するのだけれど、あまりにも突拍子過ぎて、たまに大学の先生や専門家にやりこめられていた印象があります。  

 私も、この『猿丸幻視行』を読んで、この世の中にはこんな面白い歴史ミステリーを書く人がいるんだと感動し、他の作品を読んで失望した口でした。  

 著者が乱歩賞を受賞した年齢は、確か二十代の半ばだったと記憶しています。  

 若くして乱歩賞作家になったのですが、乱歩賞には大学時代から毎年応募し、5~6回目でようやく受賞したらしい。  

 その意味では、多くの失敗作を乗り越えて、この大傑作がある。  

 誰だか忘れましたが、この作品を評価した批評家が、「突然変異で、とんでもないミステリーの傑作を書き上げたものだ」と書いているのをどこかで読んだことがあります。  

 いろいろ試行錯誤してやっているうちに、素晴らしい仕事のアイデアや方法を思いついた経験は誰にでもあるはず。  

 …といっても、飛び切りに素晴らしいものは、人生のうちでそうあるものではありません。

 井沢元彦氏の場合、おそらく二十代の半ばで作ったこの作品が、人生最大の傑作となるのでしょう。  

 とにかく、歴史ミステリーでありながら、プロットが面白い。  

 探偵役は、国文学者・歌人・民俗学者として知られる折口信夫。しかし舞台は現代。

 そして折口信夫が、奈良時代後期か平安時代初期に生存した猿丸太夫の秘密を明らかにするストーリー。  

 完全に時代錯誤で、よくわかりませんよね。

 でも、読んでいくうちにこの荒唐無稽な話も説得力を帯びてくる。  

 とくに古歌の暗号解読に若き日の折口信夫が取り組む流れは、乱歩賞屈指の面白さ。

 それに現代で起きる殺人事件、古代で起きる奇想天外なトリックの事件がないまぜとなって、一体これを書いたときの著者はどんな頭の構造になっていたのかと驚かされました。

 トリックに関しては、少し子供だましの部